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ブリューゲルの「バベルの塔」展覧会

2017-05-23 10:36:18 | 美術
上野の東京都美術館で「バベルの塔」展覧会を観る。その名の通り、目玉作品はブリューゲルの「バベルの塔」とヒエロニムス・ボスの何点かの作品。それだけでは、展覧会にならないので16世紀のブリューゲルの版画が結構多く出ているほか、誰の作品かわからないが、木彫りの聖人像などが展示されている。

ブリューゲルはなんとなく、農民生活を描いた絵のイメージだったのだが、この展覧会を観ると、どうやらヒエロニムス・ボスの弟子だったようで、初期の版画ではまるでボスのようなへんてこな生物をたくさんちまちまと書き込んだ版画がある。そうした訓練を受けていたためか、農民生活を描いた絵でも、いろいろな人物がちまちまと書き込まれているのだ。

そうした観点で改めて「バベルの塔」を見ると、塔を建設中の人々が目に見えないくらいの大きさで、ちまちま書き込まれている。今回の絵はオランダにあるボイマンス美術館から借りてきたようだが、同じ主題の「バベルの塔」はウィーンの美術史美術館にもあり、そちらのほうは見ていたのだが、働いている人々がどのくらい書き込まれていたかは注意を払って観なかったので、次の機会にでも確かめようと思う。

ボスの作品としては聖クリストフォロスを描いた作品が出ていて、クリストフォロスという名前の由来が「キリストを背負う人」という意味だと初めて知った。確かにクリストという文字が入っている。この絵でも注意深く見るとボスの特徴である変な生き物や題材が入っているが、普通に見ると気が付かないので、拡大写真付きで説明がしてある。けっこう親切だ。

しかし、ボスの本当のすごい絵を観ようと思ったら、スペインまで足を延ばしてプラド美術館のボスの部屋で大作を見るしかないだろう。今度の展覧会でも、いかにボスがへんてこな絵を描いているかを示すために、複製の絵が出て少し説明してあるが、これではボスの面白さはなかなか分かりにくいだろう。

聖クリストフォロスのほかには、聖カテリーナを主題とする作品も何枚かあった。イタリアの絵ではたいていの場合、「車輪」と共に描かれるのだが、北方での特徴なのか、「剣」と共に描かれている。だから、説明を読まないとカテリーナと気づかない。説明文では、そこらも親切に解説したほうが良いのではなかろうか。

ほかにも肖像画などが何枚か出ていて、これが結構面白い。よく描けた肖像画には人の性格までにじみ出る。恐らくは当時の裕福な商人夫婦を描いた作品だろうが、この夫は何か狡猾な感じで悪い詐欺的なことで金儲けをしたようなムードが顔にそのまま出ている。その妻ときたら、これもまた悪いだけでなく意地悪そうで、召使にも当り散らしそうな顔だ。そのままシンデレラの継母にしてよいかと思う。

そうかと思えば、いかにも人のよさそうな貴族や、信心深そうな夫婦の肖像画もあった。いろいろと描かれた人を見ているとこんな変な顔を描くなんてとか、デフォルメされていて、絵が下手なのではと思うこともあるが、最近は本当にそういう顔に人だったのではないだろうかと思うようになった。

というのも、世界各国を回って各地の人々の顔や体つきを見ると、本当に美術は写実的なのだと感じるからだ。古いアルカイック・スマイルの像なども、あの地方に行けば現在でもそんな人々に会えそうな気がする。などと、思いながら2時間ほど楽しんだ。

ちょうど昼時になったので、上野公園近くの店で天丼を食べる。正直言ってあまりうまくなかった。これならば、少し足を延ばしてトンカツでも食べに行ったほうがよかったと悔やむ。上野周辺ではいつも食べるものに困ってしまう。最近は外国からの旅行客も多くなったので、安くうまい食事をきちんと提供できるようにしたほうが良いのではなかろうか。

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