勢いよく家を飛び出してはみたけれど、心の拠りどころはおじいちゃんの思い出と、おかあちゃんだった・・・なのに、あれあれ、喜代美さんったら、「きれいに生んでくれれば~」「賢く生んでくれれば~」なんて、私が一昨日書いたしょうもないことを、またしても糸子さんに言ってしまいましたね。そのあとすぐ、「母親にそんなこと言ったらあかん」と、草々さんに叱られました(真っ赤な毛糸のパンツに目をそらしながら)。その言い方は、何だか訳ありな感じだったけれど、がさつで乱暴な人とばかり思っていた草々の、実は繊細で優しい性格が顔を覗かせた場面でした。「鯉」の卵が孵化した瞬間かもしれません。喜代美はまだ気づいていないでしょうが・・・
『ちりとてちん』第3週「エビチリも積もれば山となる」は、フリーライターの奈津子さん(まだチラッと見ただけなのですが、月曜の「スタパ」に出演した彼女、すごい綺麗な人ですね。またしても、鯉に墜ちるニワトリでした・・・)をたよって大阪に上京した喜代美が、徒然亭に下宿するまでの紆余曲折をテンポよく、見る者に有無を言わさずあれよあれよという間に駆け抜けてゆきました。こりゃあ、ほんとに落語だわ・・・凄腕の取り立て屋=「哀れの田中」(山田と間違えられても、まあいいっか)との「哀れ合戦」に勝って、見事借金取りを追い返したものの「哀れのチャンピオン」と呼ばれて落ち込むなど、エピソードの数々に古典落語のネタが仕組まれているのではないかと、原作探し、つまり古典落語を読みたくなりました。このドラマ、ほんとにすごいっす!
元ネタは『くしゃみ講釈』とのこと。『愛宕山』の「唄」にも驚ろかされたが、キーコの意外な才能に草若が気付いた? ちなみに、草々が小浜で語ったのは『次の御用日』という落語だそうです(KEIKOさん、教えてくれてありがとう~)。
清海は悪い娘ではないけど(昔からB子を親友だと考えているあたりは、空気を読めないというか、かなりニブい)、一緒に暮らすのはどうだろう? という順ちゃんの危惧がすぐに的中して、喜代美はマンションを飛び出してしまいます。コンプレックス故に今までずっと清海の脇役(影)に甘んじてきたわけですが、正しく「チリも積もれば山と」なっていたわけで、苦労してセワタを抜いて下ごしらえしたエビを清海が何気なしに炒めてしまったことで、大噴火してしまいました。日蔭者の気持ちがわかるニワトリさんは、「あわれな喜代美」のために「うんうん、気持ちはわかる。わかるよ、喜代美。でも、これからどうするの?」と、頷きながら涙を流していましたが(嘘)、おそらく清海は喜代美の激怒した理由を一生理解できないでしょうね。
もうあんなことをしでかしたら清海のマンションには戻れない・・・必死の思いで大阪に出てきたけど、B子はビーコのまま、何も変わらない。やることなすこと裏目に出てしまう。それはひとえに、深い考えやしっかりした目的を持っていない自分が悪いのだけど(おかあちゃんに、何がやりたいの、どう変わりたいの、と言われて、答えられない自分がもどかしい)、このときの孤独感というか、閉塞感というか絶望感は察するに余りあるものがありました。
泣き疲れ歩き疲れた彼女の耳に、何やら呟く優しい声が聞こえてくる・・・どこかで聞いた懐かしい声は(今思うと、ここにも伏線が引かれていたのですね)、おじいちゃんと飽きることなく聴いた『愛宕山』だった・・・その声に導かれるまま進んでいくと、その先には「おじいちゃん・・・?」
人が下ごしらえしたエビチリを炒めてはならないという教訓?を含んだある種痛快な(初めて面と向かって「あんたにはむかつくの」と言えたじゃん)エビチリ事件と、喜代美と徒然亭草若師匠との侘しくも素敵な出会いは、今後ニワトリさんがエビチリを食べるたびに思い出し笑いをするだろう(しないしない)エピソードになりました。
そして、彼女にとって、もう一人の大事な人との出会いが・・・
丈の合っていない時代遅れのストライプのスーツを着たもじゃもじゃ頭(真澄ちゃんみたい、「のだめ~」の皆さん、元気ですか)の大男を初めて見たとき、「優作だ・・・」と思いました。これは最大最高の褒め言葉です。徒然亭草々を演じる青木崇高さん、「演じるのでなく、草々として生きたい」とおっしゃっていましたが、私は大変気に入りました。一目惚れかも。大ブレイクの予感も!
「一緒に住んでくれ!」「えっ?」
(熱を出して倒れた喜代美のおでこに手をあてたのが、この「かたまり」ポーズの始まりだったっけ・・・)この先、何度、草々&喜代美のユニークなスキンシップ(手のひらランゲージ?)が見られるか!も楽しみです。そしてお楽しみといえば、喜代美の妄想シーン。今週も楽しかったけれど、「借金のかた→遊郭で客引き」に爆笑! しかもかほりさん、色っぽかったです~~
そして、相変わらずの糸子さんパワー! 和田家の人々、誰もついていけません。
(あの電話の内容では、無理もありませんが・・・)
清海から喜代美が出て行ったきり一晩戻ってこないことを知らされ、宅急便を送りに郵便局へ行ったはずが大阪まで出てきてしまった糸子さん。清海のマンションについた途端、タイミングよく電話が鳴り、清海を押しのけて勝手に受話器を取ると、ビンゴ!「えっ、何でおかあちゃんが電話に出るの?」
間違えて実家に電話してしまったと勘違いしてすぐに電話を切った喜代美ですが、出前のカレーうどんを持ってきた熊五郎のビビりながらの啖呵が電話越しに聞こえてきたものだから、それを喜代美のピンチ(誘拐された?)と誤解した糸子さんは、かすかに聞こえてきた「寝床」という言葉を頼りに、得意の鼻を利かせて!居所をつきとめてしまいます。
母(鼻)の感はさらに冴えわたり、喜代美に代わって、ここに下宿させてもらえないかと、頼みこむ変わり身の早さに脱帽しました。そして、喜代美が住むことになった部屋を掃除したり(二人の部屋を仕切る壁に大きな穴が開いている理由を知りたかったのですが、原因を作ったのは糸子さんだったのね・・・こうして後から納得するのも楽しいな~)、手料理を娘に教えたり、束の間の時間でしたが、二人にとって一生の思い出になるひとときを過ごせて、本当によかったですね。
あれよあれよという展開に笑い転げながらも、最後はしんみり泣かせてくれた『ちりとてちん』でした。
「ホームまで送る」と言う娘に「ここでいい」と言って、帰りの列車で一人涙ぐんだ母と、母が作ってくれた「茶色」の料理に泣きじゃくる娘・・・隣室で稽古中の草々の落語が壁の大穴越しに聞こえてきて・・・いいエンディングでした。
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