No.272から続く。
老板が来るまでの間、どこのカラオケだろうだの、何時頃になるかだの、いろんなことを聞いてくるものの、こちとらもどこへ拉致されるのか、この時点では全くわからないし、状況次第なので何時になるかの約束もできない。
しかも万が一だ。万が一にでもカラオケのおねーちゃんがとびっきりだったらどうしよう?
買物にかけた110元以上の価値があって、しかもこのへんのコストを老板が負担してくれるようなら、あっしの揺れる下心はあっという間に寝返ってしまうことは確実だ。
などと考えているから、向かいのお嬢さんが話しかけてくるのも、「ああ」とか「ふーん」とか言いながら全く耳に入らない。
「近くって言ってたけど遅いねえ・・・。」
独り言を言っていると、
「たーさんはどなた?」
周りの客まで振り向く。おいおい、入ってくるなりいきなり名前呼ぶか?
仕方がないので、手を振ると、
「ああ、初めまして。こんばんは。表の車で老板待ってますから先に行ってください。」
「いや、まだ会計してないから・・・」
「お先にどうぞ。私が払っておきますから。」
「えーっ!いいよ、いいよ。自分で払うから。」
「もうお金預かって来ちゃってるから。私が怒られちゃう。」
まったく、台湾人ときたら、弟扱いだとメシ代も払わせちゃくれない。
「じゃあ、よろしく。」
「いいの?」と心配顔の彼女。
「兄いの奢りだっていうから、車に乗ったらお礼だけ言っといて。店までの道は説明できるよね?」
「それは大丈夫。」
「じゃ、先に店を出てよう。」
表に出てみると、老板が車から降りてこちらを見ている。満面の笑みだ。
「いよう、たーさん、悪いなデート中のところ。」
「老板、ごちそうさま。ホテルも按配してもらって申し訳ない。」
「いいって、事のついでっちゅうもんだ。あいつはまだか?」
「今払ってもらってると思うよ。」
「そちらが彼女か?○○です、どうぞよろしく。」
「あ、ごちそうさまです。私、劉です。」
「どこまで送っていけばいいのかな?」
「○○路の角を右に曲がったところまで。」
「うん、わかる。」
「お待たせー。」
と老板の彼女が戻ってきた。ご丁寧にガムを5,6枚ひっつかんでいる。
このへんはさすがに中国人というところか?
「お待たせ、ごめんなさいね。」
「いやあ、すいませんねえ。支払いまで。」
老板がいくら渡したのかはわからないけれど、釣りを返す気はさらさらないらしい・・・。
このへんもさすがに中国人というところか?
「さあ、行こう!」
ご訪問有難うございます。
Copyright © 2005-2009,2010 Ta-san, All rights reserved