2018年下半期第160回直木賞受賞作。「小説現代」2018年6月号掲載、541 頁の大作。
物語の舞台は、戦後すぐのアメリカ統治下の沖縄。
フェンスを越え、米軍施設から食料、医薬品、衣類などを盗み出す若者たちのグループがいた。リーダー(20歳)は、「オンちゃん」と呼ばれ英雄 だった。
その「英雄の失踪」を軸に、幼女強姦殺人事件、米軍機の小学校への墜落、反米暴動・・・。
沖縄の人々にとって忘れることのできない史実を底流に、奪われた「故郷」を取り戻すために立ち上がった若者たちの物語。
ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)
蛇足:直木賞選評~北方謙三氏
「驚くほど丁寧な取材である。復帰前の沖縄の街や基地の姿が、ストーリーとは別に浮かびあがってきて印象的であった。かつて日本ではなかった日本が、抱かざるを得なかった情念のありようは、錯綜した複雑なもので、過剰なほどに人間的で哀しい。その哀しみが、南国の花のように鮮やかであった。」