【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「カメレオン」:平野一丁目バス停付近の会話

2008-07-16 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

10円?なんだ、これ?
何でしょうね。謎だわ。
10円じゃあ、いまどき何にも買えないだろう。昭和の時代ならまだしも。
でも、なんか愛嬌がある看板でいいじゃない。
愛嬌があるといえば、映画の「カメレオン」だろう。
ああ、あの東映アクション映画ね。もともとは、脚本家の丸山昇一が30年も前に松田優作を見込んで書いたシナリオだっていうから、どんな映画になるかと思ったら、たしかに愛嬌たっぷりな映画になってた。
松田優作とか萩原健一が活躍していたころをほうふつとさせるチンピラ映画だったな。
ちょっと時代遅れっぽい感じがなんとも心地いい。
おー、お前もとうとうそういう心境に達してきたか。
年とったってこと?
おとなになったってことよ。
なーるほど。そう考えてみると、おとなのお遊び映画ともいえるわよね。
主役の藤原竜也は、松田優作に比べるとやっぱりまだまだ若い気はするけどな。
でも、茶目っ気たっぷりに飛んだりはねたり、大活躍。儲け役じゃない?
相手役の水川あさみが、これまた蓮っ葉な感じをみなぎらせていい味を出してる。
テレビの「ラスト・フレンズ」で最終回、いきなり結婚しちゃう女の子よね。主役たちの影に隠れていたけど、ちょっと崩れた役でこれからどんどん出てくるかもよ。
それに、谷啓とか犬塚弘とか加藤治子とかひとくせもふたくせもある連中がからんでくる。
こうなってくると、昭和の匂いが漂い始めるのよね。
古い、というより懐かしい映画だな。会話、会話に小さなギミックを入れたりして、クスリとするシーンのなんと豊かなこと。
かといって、テンポはいいし。
アクションの切れも目を見張る。
大作でもなく、テレビの焼き直しでもなく、こういうふらりと見れる気楽な娯楽映画が昔はあった、っていう見本のような映画ね。
じゃあ、つくりもチープなのかというと、そんなことはなくて、国会の証人喚問のシーンの美術なんて、いかにも本物っぽい臨場感にあふれていて、テレビとは違う映画屋の心意気を見た気がした。
若いチンピラが汚職にかかわる人物の拉致現場を目撃したことからその筋の人間に追われる、なんてストーリー自体はよくある話しなんだけど、CGをいっさい使わず肉体だけで勝負するアクションと、憎いほど軽妙な会話で、魅せる、魅せる。
鉄道ファンの俺には、ローカル線がまたわけもなく郷愁をさそう。
この映画の監督、阪本順治の昔の「傷だらけの天使」にもローカル線が出てたけど、映画全体があの映画をもうちょっとハードにしたような気分もある。
まあ、職人、阪本順治監督だから、安心して観ていられるしな。
なんといっても、見所は、敵と拳銃を交換する場面。
あんなところで、あんなことするかよと思うけど、あれがあるから映画になるんだよなあ。昔の映画の雰囲気を再現したっていう意味で、阪本順治版「グラインド・ハウス」っていう言い方もできるな。
10円じゃあ観れないけど、かつては日本映画にもこんな映画があるんだって、知ってほしい気がするわね。
いや、いまでもあるってことをだ。



この記事、まあまあかなと思ったら、クリックをお願いします。



ふたりが乗ったのは、都バス<門33系統>
豊海水産埠頭⇒月島警察署前⇒新島橋⇒勝どき三丁目⇒勝どき駅前⇒月島三丁目⇒月島駅前⇒越中島⇒門前仲町⇒深川一丁目⇒深川二丁目⇒平野一丁目⇒清澄庭園前⇒清澄白河駅前⇒高橋⇒森下駅前⇒千歳三丁目⇒緑一丁目⇒都営両国駅前⇒石原一丁目⇒本所一丁目⇒東駒形一丁目⇒吾妻橋一丁目⇒本所吾妻橋⇒業平橋⇒押上⇒十間橋⇒柳島⇒福神橋⇒亀戸四丁目⇒亀戸駅前






最新の画像もっと見る

コメントを投稿