【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

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「ちゃんと伝える」:西大島駅前バス停付近の会話

2009-08-26 | ★亀29系統(なぎさニュータウン~亀戸駅)

何て書いてあるのかしら。
「青少年に愛の手を」。
ずいぶんストレートなメッセージね。ちゃんと伝わるかしら。
だいじょうぶ。ストレートなメッセージはちゃんと伝わるさ。
あら、たいした自信ね。その自信はどこから来るの?
園子温の新作「ちゃんと伝える」を観たからさ。
園子温っていえば、「紀子の食卓」とか「愛のむきだし」とか、ストレートとは程遠い、やたらいびつな傑作をつくってきた監督だけど。
ちゃんと伝える、というより、恥も外聞もなく、無理やりにでも伝えるって印象だった。
とにかく、異常な熱気で押し通しちゃう。
その監督が、今回はそのいびつな部分を全部削ぎ落として、実にオーソドックスな映画をつくった。
そんなこと言っても、主演がEXILEのAKIRA。オーソドックスになんてならないんじゃないのと思っていたけど。
そのAKIRAがまた、予想に反して、派手なところのまるでない堅実な若者を好演している。
物語の中心にあるのは父と息子のコミュニケーション。そういう意味では前作の「愛のむきだし」からつながっている。
主題はそのままに、手法を従来の日本映画寄りに転調して描いたっていえば、近いかな。
でも、前作とこんなに表現に温度差があって、突然どうしちゃったのかしらね、園子温。
「ちゃんと伝える」は、がんで死にそうな父親を見守る息子の話だからな。さすがに、飛んだり跳ねたりできないのかもしれない。
その息子のほうにも父親に言えない秘密がある。ちゃんと伝えたいことが伝えられないもどかしさ。
やがて、湖のほとりにたたずむ二人。その背中。
息子は、父親の背中を見て育つっていうけど、父子の背中が並んでしまう。ああいう形でしかあふれる思いを伝えられないかと思うと、胸がつまるわ。
でも、きっとあれでちゃんと伝えられたんだよ。
会話はないけど?
そう、ことばにできない思い。
イタリア映画の「湖のほとりで」に出てきたような静かな湖のシーンだった。
最後には、実父に捧ぐ、っていう監督のメッセージが出てくる。父親の顔を思い浮かべながらつくると、誰しもこういう実直な映画をつくってしまうということなのかもしれないな。
園子温がどういう映画をつくって来たかを知らずにこの映画を観れば、日本映画のよき伝統を受け継いだ、心に触れる映画だって満足できるかもしれないわね。
おいおい、同じ監督だからって、いつもいつも同じような映画をつくるとは限らないぜ。題材によっては、こういう、ある意味、教科書のような映画をつくれるってことは、才能がある証拠だ。ミニシアターだけでなく、同じように父をおくる映画「おくりびと」を上映した映画館でもかけてほしいと思ったね。
それを伝えたかったの?
ああ、ちゃんと伝えたかった。




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