どうしたの、さっきからそんなにじっと川をのぞきこんで。
いや、俺みたいな、うだつのあがらない男は、川へでも飛びこんだほうがいいのかな、と思ってさ。
あら、珍しく弱気ね。何かあった?
何にもないから、空しいのさ。
そんな寂しいこと言って川を見つめてばかりいないで、いつもみたいに映画でも観て気晴らししたら?「街のあかり」とか観ると、生きる勇気がもらえるかもよ。
おいおい、俺はその映画を観たから、こんな沈んだ気持ちになったんだぜ。
まあねえ、アキ・カウリスマキの映画って、「浮雲」にしろ「過去のない男」にしろ、だいたいいつも、あなたみたいなパッとしない男が主人公の冴えない話だもんね。「街のあかり」も、とっても地味な映画であることは認めるわ。
愛想のない男と愛想のない女の愛想のない物語。それは今回も変わらなかった。この映画のどこが生きる勇気を与えるっていうんだ?
彼の映画に出てくる男女って最初から最後まで不景気な顔ばかりしているもんね。
そうだろ?しかも今回は、男が女にだまされて無実の罪で刑務所に入るといういままで以上に悲惨きわまりない話だ。こんな映画を観たら川へ飛びこむしかないじゃないか。
でも、泣くでもわめくでもなく彼は淡々と運命に従い、最後にはちょっとだけいいことがある。そこがあなたとは違うわね。
どうせ俺はいつも泣いたりわめいたり踏んだり蹴ったりしてるよ。
あれくらい仏頂面な面々がしみったれた物語を展開すれば、本来なら気が滅入りそうなところよね。ところが、アキ・カウリスマキの映画って観終わったあとには、なにか、人生って捨てたもんじゃないかも、って自分を肯定したい気分になるから不思議なのよ。
そうか?俺はいつも落ちこむぜ、きょうみたいに。
あまりにも境遇が似てるから?
言うな!
でも、登場人物の仏頂面がいつのまにか自分を鏡で見てるみたいにいとおしくなってくるから不思議なのよ。無表情の中でもときおり表情を崩す彼らを観ていると、生きるってほんとうはこういうことなのよね、って妙に納得しちゃうわ。
意味わからん。
だから、悲しみも喜びも淡々とやりすごすのが人生だってことよ。普通の映画のように、大変なドラマがあったりみんながオーバーなアクションをするなんて、現実にはそんなにないってことよ。人生は、小さな、小さなできごとの小さな感情の積み重ねだってこと。だから、観ているうちに共感してきちゃうのよ。
でも、悪い女にだまされて刑務所に入るなんて、本人にとっちゃ一大事だぜ。
それを淡々と受け止めるから、しみじみといいんじゃない。こういう映画の良さをわからないなんて、おとなじゃないわね、あなたも。
しみじみと、か。
しみじみと、よ。ラストシーンなんてしみじみの極地。
しみじみねえ。しみじみと、もう少し生きてみるか。
そうそう、そういう淡々とした勇気を与えてくれるのよ、アキ・カウリスマキの映画は。
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菊川三丁目バス停
ふたりが乗ったのは、都バス<東20系統>
東京駅丸の内北口⇒呉服橋⇒日本橋⇒兜町⇒茅場町⇒新川一丁目⇒永代橋⇒佐賀一丁目⇒永代二丁目⇒門前仲町⇒不動尊前⇒富岡一丁目⇒木場二丁目⇒木場駅前⇒木場三丁目⇒木場四丁目⇒東京都現代美術館前⇒白河⇒森下五丁目⇒菊川駅前⇒菊川三丁目⇒住吉一丁目⇒住吉駅前⇒毛利二丁目⇒錦糸堀⇒錦糸町駅前
他の2作品も観てみたいと思います。
寡黙さと愛想の無さ。他の作品もまったく同じですが、なぜかくせになります。ぜひご覧になってください。
>クセになる
確かに アキちゃんは クセになります
あ==あ
何年か前の DVDBOX 買っておけばよかった!
今は 入手不能です。
私は 敗者三部作より
「マッチ工場の少女」のような
ヘンな映画が好きです。(笑)
彼独特の間合いも 大好きです。
そのうち、敗者3部作のDVDBOXでも出るんじゃないでしょうか。
「マッチ工場の少女」も相当愛想の無い少女でしたね。なのに、不愉快にならないから不思議です。
ほんとに、しみじみですなあ。
まあ、命までとられないからいいやと思ってみていたら、最後でボコボコにされちゃって、結末は分かっているのに、死んじゃったらいやだなあ、としみじみ思っちゃいました。
こんなに何を撮っても同じような映画になる監督も珍しいですね。しかも、それぞれに魅力的。今回もじみじみさせていただきました。
正直、見ている間は無表情のダメ男コイスティネンにイラッとしてました(笑)
でも、あのラストに辿り着いた時、なるほど~と思いました。
この「なるほど~」がカウリスマキなのかなぁなんて思います。
上手く言えないんですけど・・・(笑)
この「なるほど~」の「~」は声を下げ気味に言ってくださいね。決して、勢いよく言わないように。それがこの監督への賛辞だと思います。