日の出という名がつきながら、こう、どんよりした空模様の日の出桟橋に立つと感慨深いものがあるな。
どうして?
いや、アフリカの日の出はいつ来るんだろうって思ってさ。
まあ、最近は「ホテル・ルワンダ」とか「ナイロビの蜂」とか「ラストキング・オブ・スコットランド」とかアフリカを舞台にした映画が流行のように出てきたけど、どれも日の出とはほど遠い思いに陥る映画ばっかりだったもんね。
そんななか、真打ち「ブラッド・ダイヤモンド」の登場だ。
真打ち?この映画もアフリカの暗い現実を描いた映画の一本だとは思うけど。
ああ。いままでの映画と同じく、欧米のわがままによってアフリカの人々が悲劇に巻き込まれるという構図を告発した映画には違いない。
欧米というより日本人も含めてでしょ。先進諸国がダイヤモンドをほしがるんで、そのダイヤをめぐって生産国アフリカで悲劇が起こるって話なんだから。
捕らえた捕虜の手を切り落とすなんて、アフリカの人ってなんて残酷なんだと思ったら、もともとはベルギー人がアフリカ人に対してやっていたことだって言うんだから、ひどい話だ。
「ホテル・ルワンダ」の紛争ももともとはベルギーの植民地政策から始まったっていうのを思い出したわ。
子どもが日常的に兵士として育てられてるっていうのも、衝撃的だよな。幼い子どもが捕虜を撃ち殺しちゃうんだぜ。
「イノセント・ボイス 12歳の戦場」では南米の国が子どもを奪って戦士に育て上げてたけど、世界中どこも悲劇は変わらないってことかしら。
「男たちの大和」を観て、まだこんないたいけな若者たちが犠牲になるなんて、って泣いてた人に言いたいよな。それ以上に悲惨なことが世界ではまだ続いているんだってことを。
「戦争中なのに、人ひとり助けてどうするの?」ってジャーナリスト役のジェニファー・コネリーが口走って、あわててそのことばを反省する場面があるけど、これだけ虐殺の場面を観てしまうと、そういうことを口にしてしまう気持ちもわかってしまうから怖いわよね。
彼女は記事を書いてるときに「その記事で誰かが助けに来るのか」と現地人に聞かれて「誰も来ない」って答える。あれもいいセリフだ。
いままでのアフリカの映画と同じくらい、いい映画じゃない。
ところが、いままでのアフリカ映画と違って、「ブラッド・ダイヤモンド」はそういうことを辛気臭くならずに観ていられる。
どうしてかしら?
やっぱり、主役にデカプリオとジェニファー・コネリーを持ってきたところに勝因のひとつがあるんじゃないか。なんといっても華がある。デカプリオなんて出世作の「ギルバート・グレイプ」以来の好演じゃないかと思えるし、ジェニファー・コネリーの女性ジャーナリストなんて、ハリウッドお得意の配役のような気がするけど、おかげで問題提起の会話も肩が凝らずに聞いていられる。
ほんと、ダイヤの売人役のデカプリオは「ディパーテッド」なんかより全然いいわよね。案外、アクション映画向きなんじゃない?
そうそう。残酷なシチュエーションも多いけど、アクションで見せるから陰湿にならない。
ラストシーンも、ハリウッドの社会派映画の教科書みたいな、明るい未来を予感させる終わり方だもんね。
そして、全体を貫く芯となるのが、生き別れた父子の再会をめぐるサスペンス。
どこで、どう再会するのかって気が気じゃなくて、観ている間じゅう気持ちが引っ張られるのよね。これも、ハリウッド映画の教科書みたいなストーリー構造よね。
オランダ映画の「ブラックブック」もサスペンス映画としてはよくできたいたけど、「ブラッド・ダイヤモンド」に比べると複雑すぎてちょっと嘘くさいし、やっぱり、第二次世界大戦っていう時代背景も、アフリカの紛争に比べるといまや切実感に欠ける感じがして損をしている。
デカプリオをジンバブエ生まれの白人にしているのもうまい設定じゃない?白人ていうと、アフリカ映画では、どうしても加害者の立場になって陰気臭くなってしまうけど、アフリカの紛争の中で両親を失くした役にしておけば、彼も被害者の立場になれる。
おー、いいとこ、つくねえ。要するに、問題提起を鼻につかない形でうまく娯楽映画に翻訳し直したんだよ、この映画は。話がこなれていて危なっかしいところがないんだよな。
それが、アフリカ映画の真打ち登場って意味ね。
そういうこと。
でも、デカプリオの字幕に「給料三ヵ月分でダイヤモンド」て出たのには驚いたわ。給料三ヵ月分て、世界共通なのかしら?
さあ、原語では何て言ってるのかな。こういうときだよなあ、上司とNOVA友になっとけばよかったなあ、て思うのは。それとも監督のエドワード・ズウィックが「ラスト・サムライ」のロケで日本に来たとき、覚えて帰ったとか?
まさか。昔はよく映画館のCMで「給料三ヵ月分」てやってたけど、最近はとんと見ないじゃない。
でも、ロンドンのシーンでは、ご愛嬌なのか、いかにもわざとらしく日本の老夫婦がカメラで観光名所を撮影しているシーンが一瞬あったりしたぜ。
で、あなたはいつ、くれるのよ、給料三ヵ月分のダイヤ。
いや、こういう映画を観ちゃうとなあ・・・。
こういう不正な密輸ダイヤはもう出回ってないって、最後に字幕が出たじゃない。
え、そうだっけ?
とぼけちゃって・・・。
いや、ちゃんとそんな字幕を見てたなんて、やっぱり女だなって思っただけだ。
で、くれるの、くれないの?
いや、そういう会話につながる映画じゃないと思うんだけど・・・。
なるほど、私たちの日の出はまだ来ないってことね。
はい・・・。
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ふたりが乗ったのは、都バス<虹01系統>
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いつもお世話になっております。
マディの記事について
>「その記事で誰かが助けに来るのか」と現地人に聞かれて「誰も来ない」って答える
これがとても印象に残っています。
「ホテル・ルワンダ」でも同様のセリフがありましたよね。
なかなかイタイところを突いて来るセリフです。
こちらこそお世話になっています。
「ホテル・ルワンダ」にも同じようなセリフがありましたが、たしかあちらはもっと説明が長かったような気がします。それに対してこちらは、ひとことでかたづけているところが、凄いなというか、もっと悲惨というか、それだけ切実感が出ていてまいりました。
本当に、娯楽作品というか、ハリウッド大作にも関わらず、内容の濃い素晴らしい映画で、びっくりしました。
良かったですよね~
いつも「あ、あの系統乗った事あるなぁ~」と楽しく拝見させていただいております!
いつもお世話になってます、そしてコメントありがとうございます。
こういう映画を通じてアフリカの置かれている私の知らなかった現状を見せてもらいます。
今回も紛争ダイヤという存在すら知りませんでした。
ダイヤって綺麗なイメージがあるのに彼らには血の色にしか見えないのでしょうね。
この作品のレオ、まさに大人の男に脱皮したって感じでしたね。
かつてのレオファンとしてはこの復活を非常にうれしく思ってます。
見ごたえあってメッセージもあって、すばらしい映画でしたね。
ところで、八ちゃんさんは、どのあたりのバスに乗っているのかな。
■Hitomiさんへ
ほんとにダイヤを見る目が360度変わる映画ですね。あ、360度じゃ、もとに戻っちゃうか。
美しいピンクも醜いピンクも世の中にはあるっていうことですね。
「給料3か月分」は聞き捨てなりませんでしたね。
私も原語は聞き取れませんでしたが・・・世界共通なのかなぁ。。。
あの瞬間だけ、ふと我に返りました(笑)
「ラストキングオブスコットランド」はこちらではまだ上映されていないのですが、ぜひ観に行きたいと思っています。
原語では、何と言っているのでしょうね。ほんと、気になります。
「ラストキング・オブ・スコットランド」はまた、つくりが全然違う映画なので、ある意味驚くかもしれませんね。
ボクは、宝石好きな人(買えないけど・・・)なんだけど、彼女は全く興味ない人です。そんな訳で3か月分の給料は、ダイヤモンドじゃない違うものになりそうな感じですねぇ・・・
ダイヤモンドの見方が、ちょっと変わってしまった映画でした~♪
深刻ですよね。
遠い国の出来事ですけど、映画という媒体を通していろいろ知ることができました。
ダイヤ以外にもいろいろ紛争の原因になってる資源があるわけで、アフリカの大地が人間を苦しめてる現実ですね。。
私も給料三か月分は驚きましたよ。^^;
世界共通とは思えないけど・・・原語で理解できたらなあ。
映画とは関係ありませんが、給料の3か月分でダイヤモンド以外って何でしょうね。ちょっと興味あります。
■アイマックさんへ
遠い国のできごとですが、近くの女性の指に光るダイヤももしかして、と考えると妙に身近な気もします。世界は狭いのでしょうか。