Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

サンティ&N響「アイーダ」

2010年10月16日 | 音楽
 N響10月定期のAプロはネッロ・サンティの指揮でヴェルディの「アイーダ」の演奏会形式上演。

 予想どおりというべきか、サンティの揺るぎないテンポとアゴーギグが最大のききものだった。完璧にできあがった解釈。微動だにしないその解釈は、サンティの巨体に似ていなくもない。

 N響のアンサンブルは鉄壁そのもの。例の凱旋行進曲のアイーダ・トランペットに怪しげな音がまざったり、まれに音が飛び出したりしたとしても、基礎的なアンサンブルは強固だ。

 なので、これはイタリア・オペラ的ではなかったといっても、的外れではないはずだ。血わき肉躍る熱さ、あるいは情感をこめたカンタービレなどは、オーケストラからは出てこない。ここで目指されているのは堂々として隙のない構築性だ。

 歌手では、ラダメスを歌った韓国の若きテノール、サンドロ・パークの張りのある声が圧倒的だった。声を頼りに押し切るところがあるが、それも若さの特権だ。
 アモナスロを歌ったイタリアのバリトン、パオロ・ルメッツにも感心した。こちらは経験豊かな歌手らしく陰影のある歌唱をきかせてくれた。

 男声陣にくらべて女声陣は問題なしとはしなかった。アイーダを歌ったアドリアーナ・マルフィージはいつもサンティが連れてくる歌手だが、声が細いうえに妙に癖のある発声が気になる。昔はこういう歌手にぶつかることもあったが、最近では珍しい。歌い回しはサンティの音楽づくりにピタッと合っている。それは見事なものだ。

 アムネリスを歌ったセレーナ・パスクアリーニは、前半(第1幕~第2幕)は不安定だった。第2幕第1場のアイーダとの二重唱は、せっかくのききどころなのに、マルフィージの非力ともども、さっぱり盛り上がらなかった。後半(第3幕~第4幕)では持ち直して、第4幕第1場のラダメスとの二重唱をしっかりきかせてくれた。

 外国勢に伍して、使者を歌った松村英行さんと、女祭司長を歌った大隅智佳子さんが立派な声をきかせてくれた。私は大隅さんがワーグナーの処女作「妖精」を歌うのをきいて以来、注目している。今のレベルにとどまらず、さらに精進して大成されんことを。

 合唱は二期会合唱団。これはサンティの指示だろうが、最後の第4幕第2場でアイーダとラダメスが息絶えるとき、神に祈りをささげる合唱が、男声は舞台上にいたが、女声は舞台裏にいた。これはどういう意図だったのだろう。
(2010.10.15.NHKホール)

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