Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴァイグレ/読響

2019年09月11日 | 音楽
 9月に入って在京の各オーケストラが一斉にスタートを切った。わたしが聴いた都響、日本フィル、東京シティ・フィルは、いずれも意欲的なプログラムを組んで、エンジンフル回転のスタートだったが、読響も負けてはいない。セバスティアン・ヴァイグレの指揮でプフィッツナー(1869‐1949)とハンス・ロット(1858‐84)というこれまた意欲的なプログラムを組んだ。

 1曲目はプフィッツナーのチェロ協奏曲イ短調(遺作)。遺作とあるので、作曲者の死後発見された最晩年の作品かと思ったが、死後に発見されたものの、作曲は20歳前の1888年だそうだ。作曲者若書きの作品だが、若書きという感じはまったくしない。全2楽章からなるが、どこをとっても詠嘆的な歌が連綿と続く。季節でいえば晩秋という感じの曲だった。

 後述するハンス・ロットの交響曲ホ長調が、やはり若書きの作品で、作曲者の死後発見されたという点で両者は一致する。クラシック・ファンの間で話題になったが、本年2月にN響と神奈川フィルが同じ日にロットのこの曲を演奏するという出来事があった。そのときN響が組んだ前プロはリヒャルト・シュトラウスの若書きのヴァイオリン協奏曲だった。若書きの作品を2曲並べるという発想は、N響と読響で共通する(ちなみに神奈川フィルはマーラーの歌曲と組み合わせた。ロットとマーラーの組み合わせ!)。

 プフィッツナーのチェロ協奏曲では、アルバン・ゲルハルトがソリストを務めた。のびやかなラインを描く歌は、どこまでがプフィッツナーの作品に由来し、どこからがゲルハルトの演奏から来るのか、その境目は判別できないが、ともかく線の細い、あえていえば、どこかにひ弱さの感じられる歌が続いた。

 アンコールにバッハの無伴奏チェロ組曲第6番からプレリュードが弾かれた。上体を左右に揺すりながら演奏される(視覚面だけでなく、音楽的にも)動的な演奏は、プフィッツナーの静的な演奏とは対照的だった。

 ハンス・ロットの交響曲は、オーケストラを無理なく鳴らし、しかも滔々とした流れを生み出す名演だった。パーヴォ・ヤルヴィ指揮のN響が、習作かもしれないこの曲を、力業でおもしろく聴かせる演奏だったのに対して、ヴァイグレ指揮の読響は、スコアから自然な流れを読み取り、習作と感じさせなかった。

 全4楽章にわたって鳴らされるトライアングルは、表に出すぎず、細心の注意を払って演奏された。その繊細さに脱帽した。奏者は野本氏だったと思う。
(2019.9.10.サントリーホール)

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