Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

石田泰尚ヴァイオリン・リサイタル

2019年09月15日 | 音楽
 神奈川フィルの首席ソロ・コンサートマスター、石田泰尚(いしだやすなお)の今の姿を見たくて、リサイタルに行った。石田は国立音楽大学を卒業後、新星日本交響楽団に副コンサートマスターで入団し、まもなくコンサートマスターに就任した。わたしは同団の定期会員だったので、当時の石田をよく覚えている。どことなくお洒落な若者が、ひたむきに演奏している印象だった。

 同団は2001年に東京フィルと合併し、大半の楽員は東京フィルに移ったが、石田は神奈川フィルのコンサートマスターに就任した。わたし自身は東京フィルの定期会員に移行したが、新星日本交響楽団の音が失われたことを悟り、定期会員をやめた。

 石田はその後ずっと神奈川フィルのコンサートマスターを続けている。最近では独自の演奏会のチラシも見かけるようになった。髪を短く刈り上げ、サングラスをかけ、黒ずくめのラフな服を着た姿は、男っぽくて、突っ張ったような雰囲気があり、インパクト大だ。そういうキャラクターで売れる奏者になったのかと感慨深い。

 その石田のリサイタルがあるので、行ってみた次第だ。プログラムは、前半がドヴォルザークのソナチネとフランクのヴァイオリン・ソナタ、後半がクライスラー3曲とピアソラ5曲というもの。

 ドヴォルザークのソナチネが始まると、音の細さに戸惑った。針金のような、神経質な、といって悪ければ、尖った音。だが、演奏自体は穏健だ。続くフランクのヴァイオリン・ソナタでは、第2楽章アレグロが嵐のような演奏だったが(ここで会場からは大きな拍手が起きた)、第3楽章以下は平板だった。

 コンサートの盛り上がりは後半にあった。クライスラーは「プニャーニの様式によるテンポ・ディ・メヌエット」、「シンコペーション」、「ウィーンの小さな行進曲」の3曲が演奏されたが、キャラクターピースのそれら3曲の、各々のキャラクターを際立たせて、聴衆を巻き込んでいった。

 ピアソラ5曲の曲名は、煩瑣になるので省略するが、聴衆からは口笛が吹かれ、盛大な拍手が起きた。聴衆と石田が一体となったコンサートだった。アンコールはなんと6曲!「あのー、あのー、めちゃ疲れてます」といいながら、細身の体をふり絞るように演奏されたその熱演に、聴衆は乗りに乗った。

 ピアノ伴奏は中島剛(なかじまごう)。反応のいいピアノ伴奏で、コンサートの成功に貢献した。
(2019.9.14.ミューザ川崎)
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