Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラザレフ/日本フィル

2016年05月15日 | 音楽
 ラザレフ/日本フィルは、東京定期ではプロコフィエフから始まって今のショスタコーヴィチまで、ロシア音楽を一貫して取り上げているが、横浜定期ではブラームスのようなドイツ音楽やラヴェルのようなフランス音楽など、いろいろと自由にプログラムを組んでいる。今回はベルリオーズの「幻想交響曲」がメイン・プロ。

 1曲目はモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲。16型の大編成だが、音が全然重くない。張りがあって、勢いがある。えっ、なにが始まったんだろうと、思わず目が覚めるような演奏だった。

 2曲目はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」。ヴァイオリン独奏は渡辺玲子。いつもながらシャープでクリアーな演奏。第3楽章のロンド形式による繰り返しも、もったりしない。楽器がよく鳴る。使用楽器はグァルネリだそうだ。

 余談だが、1曲目の「フィガロの結婚」序曲が終わった後、ラザレフは舞台袖に引っ込まず、指揮台にそのまま残っていた。次の曲はヴァイオリン協奏曲だから、椅子の配置替えをしなければならない。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの各奏者は舞台袖に引っ込み、ステージマネージャーたちが椅子の配置を変えている間、ラザレフは指揮台で待っていた。リハーサル風景を見るようでクスクス笑ってしまった。

 休憩後はベルリオーズの「幻想交響曲」。冒頭、木管楽器が弱音で入ってきて、弦が小声で囁くような音型を奏する時、羽毛でなにかをそっと撫でるような最弱音で奏された。デリケートな音。名演の予感がした。そして、その予感どおりの演奏が続いた。音色への配慮に怠りない。安定したテンポでアンサンブルの崩れがない。何度聴いたか分からないこの曲が、ものすごく新鮮に聴こえた。ラザレフが日本フィルで成し遂げた成果を垣間見る思いがした。

 第2楽章はコルネット付きの版で演奏された。首席奏者オッタビアーノ・クリストーフォリの明るく甘い音色が、蝶が舞うように、オーケストラ全体の上を舞った。わたしはその音を追い続けた。

 アンコールにビゼーの「カルメン」の第3幕への間奏曲が演奏された。ハープのアルペッジョに乗ってフルートの吹く旋律が、「幻想交響曲」の死のドラマの鎮魂歌のように聴こえた。

 終演後、ロビーでは熊本地震の募金が行われた。楽員たちに交じって渡辺玲子も姿を見せていた。
(2016.5.14.横浜みなとみらいホール)

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