Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

尾高忠明/N響

2016年05月16日 | 音楽
 ジャズ・ピアニストのチック・コリアが出演するN響定期。演奏曲は小曽根真との共演でモーツァルトの「2台のピアノのための協奏曲」。さて、どうなるかと、前から楽しみにしていた。

 演奏順は2曲目だったが、まずその感想から。ラフな格好で現れたチック・コリア。お辞儀もそこそこに、ポケットからスマホを取り出して、満員の客席を撮りだした。場内爆笑。続けて共演者の小曽根真にもスマホを向ける。空手のようなポーズをとる小曽根真。ついでに尾高忠明にも。照れる尾高忠明。

 ようやく演奏が始まった。オーケストラによる主題の提示が終わり、第1ピアノの小曽根真、第2ピアノのチック・コリアが入ってくる。ちょっとつっかえるようなリズム処理。あちこち面白い。カデンツァになると、これはもう予想通りというか、ジャズのイディオムが入り混じって奔放そのもの。即興演奏が延々と続く。

 第1楽章が終わったところで拍手が起きた。わたしも拍手に加わった。こういう演奏の場合、澄まして第2楽章を待つよりも、拍手をするほうがふさわしいと思った。

 第3楽章のカデンツァが、これまた聴きものだった。第1楽章よりも流麗に決まっていたような気がする。「お~い、どこまで行っちゃうの?」と呼びかけたいような、「もう好きなだけやってくれ」と笑いたいような、そんな気分で聴いた。

 終演後、大拍手。またスマホを取り出して記念写真を撮りだすチック・コリア。場内爆笑。アンコールに2人の即興演奏があった。のりにのった演奏。ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」の第2楽章のテーマが顔を出す。チック・コリアの「スペイン」という曲だそうだ。

 わたしの前に座っていた若者2人は、休憩後は姿を見せなかった。チック・コリアだけをお目当てに来たのかもしれない。そういうお客さんも結構いたのだろう。

 さて、前後の曲についても感想を記すと、1曲目は武満徹の「波の盆」だった。1983年に放映されたテレビ・ドラマのための曲。当時のハワイと日本を舞台に、戦争とは何かを問いかけるドラマだったそうだ。武満徹のノスタルジックなメロディーが胸にしみた。

 3曲目はエルガーの「変奏曲『謎』」。尾高忠明の十八番だ。第13変奏(イニシャルが付されていない唯一の変奏。エルガーの若き日の恋人の想い出という説も‥)の徹底した弱音のコントロールが見事だった。
(2016.5.15.NHKホール)

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