Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

デュトワ/N響

2017年12月04日 | 音楽
 デュトワ/N響のラヴェル6曲というプログラム。先に曲目を書くと、「古風なメヌエット」、「クープランの墓」、「左手のためのピアノ協奏曲」(ピアノ:ピエール・ロラン・エマール)、「道化師の朝の歌」、「スペイン狂詩曲」そして「ボレロ」。

 デュトワもN響もお互いの手の内がすっかり分かっているという演奏。そうはいっても、6曲にはおのずから緊張感に差があるのが面白かった。

 もっとも緊張感があると感じたのは「古風なメヌエット」と「スペイン狂詩曲」。前者ではコントラストの強い演奏が印象的だった。結果、この曲が、尖がったところのある曲のように聴こえた。一方、後者では、とくに第1曲「夜への前奏曲」で、芳香が匂いたつような、繊細な音色が生まれていた。

 もう一つ面白かった点は、「ボレロ」で冒頭の小太鼓のリズムが、ほとんど聴こえないくらいの弱音で演奏されたこと。3階のわたしの席からは、リズムが聴き取れなかった。ファースト・フルートの旋律が終わり、セカンド・フルートがリズムを刻み始めると、そのリズムは明瞭に聴こえたが、小太鼓はまだ聴こえない。オーケストラの中にいると小太鼓のリズムは聴こえているはずなので、木管の各楽器に受け渡されるリズムを、小太鼓が支える演奏のように思った。

 「ボレロ」ではもう一つ、ピッコロ、ホルン、チェレスタが重ねられる箇所が、完璧なバランスで演奏された。オルガンを模倣したといわれる音色が、あれほど完璧に演奏された例は、わたしの経験では初めてかもしれない。

 「左手のためのピアノ協奏曲」は、エマールのピアノに期待したが、――たしかに最後のカデンツァは聴きものだったが――この顔ぶれなら日常的なレベルか、とも思った。わたしはアンコールを期待した。わたしの勝手な思いだが、できればメシアンかブーレーズをやってもらえないかと。だが、アンコールはなかった。

 休憩に入って、N響の公式ツイッターを見たら、なんと、前日にはブーレーズの「ノタシオン」から第1、4、5、2番が演奏されたようだ。これにはがっかりした。後半のプログラムを聴くための態勢の立て直しができなかった。

 エマールは2016年11月にも大野和士/都響と「左手のためのピアノ協奏曲」を演奏した。あのときはアンコールに「ノタシオン」から第8~12番が演奏された。集中力に富んだ壮絶な演奏だった。
(2017.12.3.NHKホール)

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