Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ティツィアーノとヴェネツィア派展

2017年03月01日 | 美術
 ティツィアーノは西洋美術史上屈指の巨匠だが、そのティツィアーノの作品が去年も今年も日本に来ている。去年は「ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」展で、今年は「ティツィアーノとヴェネツィア派」展で。

 両者とも構成は似ている。イタリア・ルネサンスではレオナルド(1452‐1519)、ミケランジェロ(1475‐1564)、ラファエロ(1483‐1520)らが活躍したフィレンツェ派の一方で、ジョヴァンニ・ベッリーニ(1438/40頃‐1516)やティツィアーノ(1488/90‐1576)らが活躍したヴェネツィア派があった。その流れを辿るもの。

 会場に入ると、まずラッザロ・バスティアーニという(わたしには未知の)画家の「統領フランチェスコ・フォスカリの肖像」が目に入る。これが面白かった。ヴェネツィアの統領(元首)フランチェスコ・フォスカリの肖像画で、ルネサンス期特有の真横から描いたもの。癖のありそうな風貌が面白い。ヴェルディの初期のオペラ「二人のフォスカリ」の主人公であるこの人物は、なるほど、こういう風貌だったのか、と。

 ベッリーニの作品では「聖母子(フリッツォーニの聖母)」が来ていた。でも、表情に硬さがあり、わたしは感情移入が難しかった。とくに表記はなかったが、工房の手が入っているのではなかろうか。

 ティツィアーノの作品は、工房作品を含めて7点来ていた。その中では「フローラ」、「ダナエ」そして「教皇パウルス3世の肖像」がとくに傑出していると思った。

 「フローラ」はきめの細かい肌の描写に惹かれた。左胸が今にも露わになりそうでドキドキする。「ダナエ」は、天から降り注ぐ黄金の雨(大神ユピテルが変身したもの)を迎え入れるダナエの姿勢に息を呑んだ。「教皇パウルス3世の肖像」は、緋色、白、黒の3色という抑えた色調から、教皇の複雑な性格がリアルに感じ取れる。

 ティツィアーノの次の世代に当たるティントレット(1519‐1594)とヴェロネーゼ(1528‐1588)の作品も来ていた。

 その中ではヴェロネーゼの「聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ」がよかった。表題にある5人の登場人物が絡み合う複雑な構図だが、緊密で堅牢な構成だ。それは、手前に描かれた聖バルバラが、全体を支える重石のようになっているからだ。圧倒的な存在感。金色の光沢がある衣装と金髪は眩しいほどだ。
(2017.2.24.東京都美術館)

(※)上記の各作品の画像(本展のHP)
   (ただし「統領フランチェスコ・フォスカリの肖像」は掲載されていない。)

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