Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ポルディ・ペッツォーリ美術館展

2014年04月15日 | 美術
 「ポルディ・ペッツォーリ美術館」展。同美術館はミラノの中心部、ドゥオーモやスカラ座の近くにあるそうだ。ミラノではブレラ美術館に行ったことがあるが、この美術館は知らなかった。

 チラシ↑にもなっている「貴婦人の肖像」(※1)は、初期ルネサンス特有の透明な空気感が好ましい。背景は空だが、実際に見ると、画面の下に行くほど(地平線の近くになるほど)空の青さが淡くなり、上に行くほど濃くなる。これによって奥行きが感じられる。貴婦人の若々しい気品はいうまでもない。ピエロ・デル・ポッライウォーロ(1441頃‐1496)の作だ。

 この作品で思い出すのはベルリン絵画館の「若い婦人の肖像」(※2)だ。対象を真横から捉えた肖像画はこの時代によくあるが、それだけではなく、横顔の、顎から鼻、鼻から眉毛、眉毛から髪の毛までの均衡や、首筋の描き方などに似たものを感じる。こちらはアントニオ・デル・ポッライウォーロの作。上記のピエロの兄だ。

 もう一つ興味深かったのは、ボッティチェッリ(1445‐1510)の「死せるキリストへの哀悼」(※1)だ。キリストが小さく、逆に聖母マリアが大きく描かれている。そのアンバランスが興味深いが、それ以上に密集した構図が面白い。

 この作品で思い出すのはミュンヘンのアルテ・ピナコテークにある「キリスト哀悼」(※3)だ。こちらの構図も面白い。聖母マリアを中心に、向かって右側からは左の方向へ、左側からは右へ、それぞれ力がかかっている。左右の力が聖母マリアに集中する。聖母マリアは左の方向へ倒れようとしている。それを福音書記者の聖ヨハネが支えている。劇的な表現だ。

 では、今回展示の「死せるキリストへの哀悼」はどんな構図だろう。密集している人物たちの頂点にいるアリマタヤのヨセフから、福音書記者聖ヨハネ、聖母マリアへの縦系列と、聖母マリアを中心に、その両脇の2人の女性の横系列がある。つまりこれは十字架の構図だ。キリスト降架のこの図像の、そこには描かれていない十字架の暗示だろうか。

 その他イタリア絵画好きなら「えっ、この画家の作品も!」と思うような作品が来ている。見てのお楽しみだが、わたしはカルロ・クリヴェッリ(1445頃‐1495)の「キリストの血を受け取る聖フランチェスコ」に惹かれた。金色の布がこの画家らしかった。
(2014.4.14.Bunkamuraザ・ミュージアム)

※1「貴婦人の肖像」と「死せるキリストへの哀悼」
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_pezzoli/works.html

※2「若い婦人の肖像」
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Antonio_del_Pollaiuolo_-_Profile_Portrait_of_a_Young_Lady_-_Google_Art_Project.jpg

※3「キリスト哀悼」
http://www.pinakothek.de/en/sandro-botticelli/lamentation-christ

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