Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

旅日記3:ある若い詩人のためのレクイエム

2013年11月29日 | 音楽
 「エツィオ」が終わってその足でアルテ・オパーに向かった。B.A.ツィンマーマンの「ある若い詩人のためのレクイエム」の演奏会を聴くためだ。じつはこれが今回の旅の最大の目的だった。

 新国立劇場の「軍人たち」に感動して、ツィンマーマンのその他の作品を探したときに購入したのがこの作品のCDだった(コンタルスキー盤)。だが、難曲だった。まして生で聴くとどう聴こえるか、想像もできなかった。今回アルテ・オパーの公演予定でこの演奏会を見つけたときには、千載一遇のチャンスだと思った。

 現代音楽であり、しかも硬派の音楽なので、会場はガラガラ、若い人だけだろうと思っていたが、満席だった。しかも初老の人たちが多かった。初老の人たちが夫婦で、あるいは単身で来ていた。日本ではあまり見かけない光景だ。

 まず合唱団が入ってくる。2階の両サイドと中央に着席する。次に別の合唱団が入ってきてステージ奥の正面に座る。1階平土間にいる聴衆を四方から囲むかたちだ。オーケストラが入ってくる。hr交響楽団(旧フランクフルト放送交響楽団)。ヴァイオリンとヴィオラがいない。これはストラヴィンスキーの「詩編交響曲」と同じ編成だ。最後にジャズ・コンボ5名、語り2名、ソプラノとバリトン各1名の独唱者そして指揮者が入ってくる。指揮者はマティアス・ピンチャー。気鋭の作曲家だ。本年9月からはパリのアンサンブル・アンテルコンタンポランの芸術監督に就任している。

 チェロとコントラバスが呟くように始まる。やがて‘声’が入ってくる。語りの声、録音された声、それらが音の波に浮き沈みする。CDとちがって明瞭なうねりがある。最初に来るクライマックス、ステージ正面の合唱団が発する‘レクイエム’の叫び。それは音楽というよりも人間の叫びそのものだ。

 やがてヒットラーの声やスターリンの声も入ってくる。巨大な声のコラージュ。2人の独唱者の音型は「軍人たち」と共通している。跳躍の大きい尖った音型。ソプラノのモンタルヴォMontalvoが艶のある声で少しの不自然さもなく歌っている。

 最後に到達する‘ドナ・ノビス・パーチェム(われらに平和を与えたまえ)’の叫び。それは行き止まりの場所に追い詰められた絶体絶命の叫びのように聴こえた。

 CDのライナーノートに「ある若い詩人」とはヨーロッパのことだと書いてあったが、それを実感できた。
(2013.11.24.アルテ・オパー)

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