Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

鈴木優人/N響

2019年12月02日 | 音楽
 鈴木優人のN響初登場はキリスト教(カトリック&プロテスタント)とユダヤ教関連のプログラム。1曲目はメシアンの「忘れられたささげもの」。メシアン最初期の曲だ。メシアンというと、わたしはすっかりカンブルラン/読響の演奏が刷り込まれている(もちろんいい意味で)。「忘れられたささげもの」も2017年4月に聴いたが、それに比べると、鈴木優人の音は湿度が高い。カンブルランの恍惚感もない。それは個性とか何とか、さまざまな要因によるのだろう。

 2曲目はチェロの二コラ・アルトシュテットをソリストに迎えて、ブロッホのヘブライ狂詩曲「ソロモン」。ユダヤ色が濃厚な曲だ。アルトシュテットは深々とした音でたっぷり歌った。一方、オーケストラの方は、よく鳴ってはいるのだが、なにをしたいのか、焦点が合わなかった。

 アルトシュテットのアンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲第5番から第4曲「サラバンド」。重音がまったく出てこない特異な曲だが、それをアルトシュテットの演奏で聴くと、バッハというよりも、世界のどこかの不思議な曲のように聴こえた。

 3曲目はコレッリの合奏協奏曲第8番「クリスマス協奏曲」。元々は独奏楽器群(ヴァイオリン2本とチェロ1本)と弦楽オーケストラ、そして通奏低音のための曲だが、鈴木優人はそこにオーボエ2本とファゴット1本を加えた。基本的にはオーボエ2本は独奏楽器のヴァイオリン2本を補強し、ファゴットは独奏楽器のチェロを補強したが、そうだと思って聴いていると、第3楽章の冒頭はオーボエ2本とファゴット1本だけで始まり、ハッとさせた。

 弦楽オーケストラは8‐8‐6‐4‐3の編成。通奏低音にはチェンバロ(鈴木優人の弾き振り)とオルガンが加わり、即興的な動きをした。独奏ヴァイオリンの一人はゲストコンサートマスターのエシュケナージが務めて澄んだ音を聴かせた。エシェケナージ以外の弦楽器群も美しかった。N響もこの時代の音楽をもっとやってくれないか、と思った。

 4曲目はメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」。「ホグウッド校訂ベーレンライター版の初稿(1830年稿)」での演奏で、「現行版(1832年稿)との大きな違いは、フルートによるレチタティーヴォが第4楽章を導く点」(星野宏美氏のプログラム・ノーツより)。第3楽章が短いので、第3楽章と第4楽章の間にブリッジをかけるレチタティーヴォが効果的だった。全体的には、弦の編成が14‐14‐12‐10‐8と低音に比重がかかり、オーケストラが堂々と鳴る中で、メンデルスゾーンの伸びやかな面と劇的な面が漏れなく表現された。
(2019.12.1.NHKホール)

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