Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

リープライヒ/日本フィル

2019年12月08日 | 音楽
 私事で申し訳ないが、去る12月3日に手術をした。全身麻酔で4時間かかる手術だった。事前に医師からは「何もなければ、週末には退院できるでしょう」といわれていた。そこで、日本フィルの12月6日(金)の定期は7日(土)に振り替えた。結果、7日(土)の定期を無事に聴くことができた。

 指揮はアレクサンダー・リープライヒ。3月の定期に引き続き2度目の登場だ。今回の1曲目はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」序曲。妙に余裕のない演奏だった。前述の通り、定期の日にちを振り替えたので、いつもの席とは違うから、耳慣れないオーケストラとの距離感やバランス感覚のせいかと思ったが、それだけでもなさそうだった。

 2曲目はルトスワフスキの「オーケストラのための書」。鮮やかな演奏だった。わたしの振替席はLBブロック(ステージの左横)だったので、指揮者の指揮ぶりがよく見えたが、それを見ていると、じつに細かく進行管理していることがわかった。この曲はこうやって演奏するのかと目をみはった。

 3曲目はリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」。どのパートもたっぷり歌い、それらが積み重なってシュトラウス独特のサウンドを生みだす。これは名演だった。とくに「英雄の戦場」までの前半部分では音楽が高揚し、それに息をのんでいると、さらに高揚する瞬間があり、シュトラウスの醍醐味を味わった。「英雄の業績」以降の後半部分でも音楽が停滞せずに、流れがよかった。

 思えば日本フィルは、単発的にはシュトラウスの作品を何度も演奏しているが、集中的に取り組んだことはあまりなかった。たっぷりとしたシュトラウスのサウンドに意識的に取り組むよい機会かもしれない。もちろんそれは、シュトラウスに造詣の深いリープライヒが今後も継続的に日本フィルを振るなら、という条件付きだが。

 リープライヒの生年月日を調べたら、1968年3月25日生まれだった(生地はドイツ・バイエルン州のレーゲンスブルク)。今は51歳。働き盛りの年齢だ。現にヨーロッパ各地で活発な客演活動を続け、また固定的なポストをいくつか兼務している。今後、日本フィルとの活動が継続するかどうか、期待をもって見守りたい。

 今回のコンサートマスターは木野雅之氏。木野氏は1993年3月に新任のコンサートマスターとして「英雄の生涯」を演奏した。指揮はジェームズ・ロッホランで、それは名演だったのだが、そのときの木野氏に比べると、今回は枯れてきたというか、「英雄の伴侶」での色気も野心もある伴侶より、「英雄の隠遁と完成」での老妻のほうに味があった。
(2019.12.7.サントリーホール)

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