Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「伊豆の踊子」執筆の宿

2015年05月08日 | 身辺雑記
 連休後半は伊豆の山へ行きました。天城高原ゴルフ場の脇から入って、天城山縦走。このコースはシャクナゲが有名です。シーズンになると登山者で混み合いますが、今はまだ早いので人も少なく、気持ちのいい山歩きができました。

 天城峠に下山してバスで湯ケ野温泉へ。1泊2食付7,000円の格安の民宿に泊まりました。たしかに古い建物ですが、温泉、食事共に十分満足しました。

 翌日はバスで天城峠に戻り、猫越岳(ねっこだけ)にむかいました。昨日のコースとつながって伊豆半島を東から西へ横断する形になります。昨日のコースは、少ないながらも、まだ人がいましたが、今日のコースはだれもいません。連休中にこんな山歩きができるなんて、望外の喜びです。

 このコースを歩くのは初めてです。なだらかな山道が快適です。ブナの新緑が目に染みるようです。山稜上に三蓋山(みかさやま)があります。その山頂は広くて、ブナの自然林がうっとりするほどきれいでした。

 仁科峠で西伊豆スカイラインに出ます。タクシーで湯ヶ島温泉へ。川端康成が「伊豆の踊子」を執筆したという湯本館にむかいました。

 湯本館は温泉街の奥まったところにありました。入るとすぐに年代物の階段が目に入ります。川端康成が泊まった頃と変わっていないようです。同館のホームページにその階段に腰を下ろした川端康成の写真が載っています(※)。まさにその階段です。

 階段ばかりではありません。階段を上ったところには、川端康成が「伊豆の踊子」を執筆した部屋が残されていました。4畳半に本床の間付きの部屋です。だれでも入っていいので、その部屋で胡坐をかいて座ってみました。往年の文学青年のわたしは、感慨に浸りました。

 つまらないことを想い出しました。高校2年生のときに、「古都」を読みだしたら、面白くて、面白くて、授業中に教科書で文庫本を隠して読みました。そのときのスリルが、忘却の彼方から蘇ってきました。「伊豆の踊子」と「雪国」を読んだ後のことでした。受験校でしたので、授業中に他の教科の勉強をする仲間もいましたが、わたしは小説でした。

 客室に「伊豆の踊子」の文庫本が置いてあったので、冒頭部分を読み返しました。さすがに名文だと思いました。引用すると――

 「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨脚が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。」

(※)湯本館のホームページ

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