Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

小泉和裕&都響

2011年06月21日 | 音楽
 都響の6月定期Aシリーズはリスト生誕200年プロ。曲目はピアノ協奏曲第2番と「ファウスト交響曲」。指揮は小泉和裕さん、ピアノ独奏はマルクス・グローさん。

 ピアノ協奏曲第2番は、例の第1番と相前後して書かれたそうだ。第1番は人気曲のひとつだが、第2番は地味な印象だ。わたしには第2番のほうが面白い。その理由を説明しても、理屈っぽくなるだけで、退屈だろうが。

 第1番は人気曲なので、安易に演奏会で取り上げられ、かえって曲の本質が見えにくくなることが気掛かりだ。それは交響詩「レ・プレリュード」でも同じだ。現に5月に在京の某オーケストラがオール・ハンガリー・プロを組んで、これらの2曲を取り上げたが、その演奏は名曲コンサートの乗りだった。

 今回の演奏はそれとは一線を画していた。ピアノ協奏曲第2番は、ピアノもオーケストラも、がっしりした構成のなかに、自由な滑らかさも欠けず、この曲の幻想曲的な(としか言いようのない)味わいを楽しませてくれた。

 「ファウスト交響曲」は今年1月に下野竜也さん指揮の読響で聴いたばかりだ。あのときは一部の隙もなく緊密に構築された演奏に圧倒されたが、オーケストラに首根っこをつかまれて、引きずりまわされた感もあって、息苦しい思いがした面もある。

 そこで今回は、もう少し楽に息ができて、しかもスケールの大きい演奏を期待して出かけた。結果的には、難しいもので、一面では期待どおりだったが、他面では下野さん&読響の演奏が懐かしくもあった。

 期待どおりなのは、力を抜くべき部分が、きちんと力を抜いて演奏され、一息付けたことだ。他方、全体的に几帳面過ぎて、曲の並外れたスケール感が出なかった。演奏とは難しいものだ。生身の人間がやっていることなので、なにかの拍子にできることもあり、またできないこともある、ということだと思う。

 小泉さん指揮の都響は、2010年5月にベルリオーズの序曲「海賊」とニールセンの交響曲第4番「不滅」で、実にスケールが大きく、かつテンションの高い演奏を聴かせてくれた。今回はそのレベルにはたっしなかった。

 コーダで男声合唱が登場し、そこからテノール独唱(今回は福井敬さん)が浮かび上がるが、このテノール独唱はファウスト自身ではないかと思った。ゲーテの原作では「神秘の合唱」のみなので、そこに独唱を入れたのはリストの創意だ。
(2011.6.20.東京文化会館)

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