Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カリニャーニ&読響

2011年06月24日 | 音楽
 読響の6月定期はパオロ・カリニャーニの客演指揮。カリニャーニは新国立劇場の「コジ・ファン・トゥッテ」をキャンセルして、わたしたちをがっかりさせたが、読響には予定どおり登場した。

 プログラムはオール・ベートーヴェン・プロ。1曲目は「フィデリオ」序曲。冒頭のアレグロのテーマが、勢い込んで演奏され、直後のアダージョの部分が、大きくテンポを落として演奏された。一瞬にして耳目を引く出だしだ。主部に入ると、明瞭にふちどりされた、きびきびした音楽の運びが際立った。音色は明るく、透明だ。なるほど、カリニャーニが振ると、ベートーヴェンはこうなるのか、という感じ。

 2曲目はピアノ協奏曲第5番「皇帝」。ピアノ独奏は辻井伸行さん。辻井さんのピアノは何度か聴いたことがあるが、今回こそ名演だと思った。明るく、太い音と、肉体の内部から湧き出るような流れは、今までも経験しているが、今回はオーケストラとの息が合っていて、実に豊かな存在感があった。辻井さんの音は体温が高くて、西欧人のいう「愛」の質量がある。

 アンコールに「テンペスト」の第3楽章が演奏されたが、これには雑なところがあった。

 3曲目は交響曲第6番「田園」。明るい音色とメリハリのきいた流れは前の2曲と同じだが、さらに音色の多彩さと安定感のあるテンポが加わり、これもカリニャーニならではのベートーヴェンだった。第2楽章では弦楽器に弱音器が付けられ、他の楽章の音色との対比が鮮やかだった。念のため、インターネットで閲覧できる楽譜を見たら、弱音器の指示はなかった。このへんの事情について、どなたか、教えていただけるとありがたいが。

 総体的には、最近、読響をこれだけきれいに鳴らした人は、カンブルランを除いて、いなかったのではないかと感じた。演奏会前には、カリニャーニは来るのか、来ないのかと、ずいぶん気をもませられたが、いざ来てみると、有無をいわせない演奏でわたしたちを納得させた観がある。

 これでよいのだと思う。原発事故で外人演奏家のキャンセルが続出している。そういう演奏家は、キャンセルにともなうリスクを承知しているはずだ。だからわたしたちも、あまり物分かりがよくなる必要はない。怒るなら怒ってもよい。あとは演奏家が、演奏によって、わたしたちを納得させられるかどうかだ。ハンディを背負った再出発だが、それは仕方がない。
(2011.6.23.サントリーホール)

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