Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

B→C 尾池亜美

2016年02月17日 | 音楽
 東京オペラシティのB→Cシリーズに尾池亜美が登場し、プログラムにルクーのヴァイオリン・ソナタを組んだので、聴きに行った。

 1曲目は池辺晋一郎(1943‐)の「ファンタジー」(1986)。ヴァイオリンを習っていたお嬢さまの発表会のために書いた曲だそうだ。平易な曲だが、聴かせどころもきちんとある。必要な時に必要な曲を提供するという、作曲家の大事な役目を果たした曲。

 2曲目は清水昭夫(1973‐)の「狂詩曲」(2014)。プログラム・ノーツによると「シェーンベルクが100年近く前に発明した、無調のシステムである12音技法を用いて書かれています」。衝動的な部分と沈潜した部分が交錯し、たしかにシェーンベルク的だ。シェーンベルクのシステムがまだ有効なことが新鮮だ。

 3曲目がルクー(1870‐1894)の「ヴァイオリン・ソナタ」(1892)。尾池亜美の若い感性と情熱のすべてをつぎこんだ演奏。すべてをつぎこむ器としてこの曲を見出した、といった演奏。聴きごたえ十分だった。

 ルクーは24歳で亡くなったが、こんなに若くして亡くなった作曲家は、他にはペルゴレージ(1710‐1736)くらいしか思い浮かばない。2人とも瑞々しい感性と成熟した書法との共存が共通している。加えてルクーはわたしの好きなフランクの流れをくむ作曲家なので、思い入れも一入だ。

 休憩に入ってしばらくすると、ロビーからヴァイオリンの音が聴こえてきた。行ってみると、尾池亜美の即興演奏が始まっていた。周りを取り囲む聴衆に気付いてびっくりするポーズ。ヴァイオリンを弾きながら客席に入る。聴衆もぞろぞろついてくる。ステージでは後半のチェンバロ伴奏、?形亜樹子(前半はピアノ伴奏で佐野陸哉)がその即興に応える。尾池亜美がステージに上って2人のパフォーマンスが繰り広げられる。場内爆笑。

 4曲目はタルティーニのヴァイオリン・ソナタ「悪魔のトリル」。自由な装飾音が入った流暢な演奏。5曲目は吉川和夫(1954‐)の「プレリュードⅢ『氷の岬の守りの木』」(1985/2015)。原曲はフルートとチェンバロの組み合わせだが、今回ヴァイオリン用に改訂された。面白かった。演奏も水際立っていたと思う。6曲目はバッハの「ヴァイオリン・ソナタ第1番」。清々しい空気感のある演奏。

 アンコールに何とかいうソルフェージュの曲が演奏された。
(2016.2.16.東京オペラシティ)

(注)?形は「くわがた」。?の字は変換できませんでした。

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