Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ミンコフスキ/都響

2015年12月16日 | 音楽
 ミンコフスキが客演した都響の定期。2014年8月のビゼー・プログラムは――聴きたかったが――聴けなかったので、今回は楽しみにしていた。

 プログラムがユニークだ。前半がルーセルのバレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」、後半がブルックナーの交響曲第0番(ノヴァーク版)。まったく性格の異なる2曲の組み合わせ。さて、どうなるか。

 「バッカスとアリアーヌ」が始まる。勢い込んだ開始。テンションがものすごく高い。音が押し潰されそうだ。でも、段々しっくりしてきた。弦の音色に艶がある。後半(第2幕)に入ると、雄弁なドラマが展開した。自由自在な動き。最後は目くるめくバッカスの祭典で終わった。

 ミンコフスキがモダン・オーケストラを振るのは初めて見たが、下半身は不動。両足が大地に根を下ろしたように動かない。一方、上半身は激しく動く。両腕の振りが大きい。上半身と下半身のその対比が鮮やかだ。ミンコフスキの作り出す音楽を幾分象徴している気がする。

 もう一つ面白かったのは、第1幕と第2幕の幕間に、指揮棒を下ろさず、そのままの姿勢でいたことだ。オーケストラは譜面をめくり、また楽器の調整をして、聴衆も咳払いをするのだが、その間ミンコフスキは指揮棒を下ろさずに待っている。次のブルックナーでもそうだった。ミンコフスキのやり方のようだ。

 ブルックナーの交響曲第0番が始まる。さて、ルーセルの熱狂の終結からどのような格差が生じるかと思ったが、意外に自然に始まった。指揮者に曲にたいする確信があると、こういう組み合わせでも問題ないようだ。

 第1楽章冒頭、低弦のリズムの刻みにヴァイオリンが絡んでくる(作曲当時オットー・デッソフに「第1主題はどこにあるのか」といわれた箇所だ)。弦の各パートの絡みが精妙だ。リズムに弾みがある。

 第2楽章の徹底した弱音、第3楽章のスケルツォ主題の舞曲のような躍動感、いずれも聴きどころだったが、さらに第4楽章コーダの嵐のような三連符に息をのんだ。ブルックナーには悠然としたイメージを抱きがちだが、じつは尖った個性の持ち主だったのではないか。アーノンクールが録音した交響曲第9番の第4楽章の草稿を聴いたときにそう思ったが、その考えがまた浮かんだ。

 2曲とも弦は16型で配置は左から1Vn、Vla、Vc(Cb)、2Vnの順だった。ブルックナーでは木管は培管。
(2015.12.15.サントリーホール)
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