Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ボストン美術館ミレ―展

2014年12月20日 | 美術
 今年はミレー(1814‐1875)の生誕200年だ。もっとも、そんな今年も残りわずかになったが。

 生誕200年といっても、正直なところ、あまり意識していなかった。ところが、今秋開かれたオルセー美術館展で「晩鐘」(1857‐59)を見て、あまりの美しさに息を呑んだ。‘泰西名画’の代表のように思っていたが、そんな単純な話では済まない傑作であることを思い知らされた。

 遅ればせながらミレーに気が付いて、府中市美術館で開催中のミレー展にも行こうと思った。でも、けっきょく行きそこなった。なので、三菱一号館美術館で開催中のもう一つのミレー展にはぜひ行こうと思っていた。

 金曜日の夜間開館の時間帯に行ったのだが、意外と混んでいた。絵を見ていると、だれかが前に立ちふさがったり、ぶつかってきたり、という具合だった。でも、まあ仕方がない。ほんとうに混雑しているときは、こんなものではないのだから。

 本展はミレーのコレクションでは世界有数のボストン美術館の収蔵品を紹介するものだ。‘3大ミレー’と主催者側が呼んでいる3作品(※)が、中でも有無をいわせぬ傑作だ。

 「刈り入れ人たちの休息(ルツとボアズ)」(1850‐53)は、画家の力の充溢を感じさせる作品だ。ダイナミックな動き、農夫たちの堂々たる体躯、深い陰影、どれをとってもミレーが画家としての絶頂期を迎えたことを物語っている。

 「羊飼いの娘」(1870‐73)は晩年の傑作だ。最初にこの絵を見たときは、とくになにも感じなかった。‘3大ミレー’が並んでいるその部屋で、ベンチに腰掛けて、ぼんやり見まわしていると、「羊飼いの娘」が目に入った。人々の後姿のあいまから見えた。‘娘’の白いスカートが光を放射していた。えっと思った。絵との距離はそうとうあった。対角線の3倍以上はあったと思う。その距離が必要だったのだ。

 もし、どれか一つあげるといわれたら、「刈り入れ人たちの休息」か「羊飼いの娘」にするだろう。でも、どちらにするか。さんざん迷った挙句、最後の瞬間に「羊飼いの娘」を選ぶのではないか。そう思ったら、すっきりした気分になった。

 もう1作の「種をまく人」(1850)は、ミレーとしては例外的なくらい英雄的、かつ理想化された図像だ。2月革命直後のパリの社会にこの作品を置いてみた。メッセージ性の強い作品だ。
(2014.12.19.三菱一号館美術館)

(※)ボストン美術館の3大ミレー
http://mimt.jp/millet/midokoro_03.html
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