後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔308〕新刊、福田緑写真集『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』完成です!

2020年11月03日 | 図書案内
 連れ合いの新刊『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』が11月半ばに出版されます。すでに彼女の元には出版社の丸善プラネットからこの本が3冊届けられました。
 出版を計画してから1年以上になります。昨年の夏のドイツ旅行中に私が出版を説得したのです。本格的な編集活動に入ったのは今年になってからでしょうか。写真集が4冊目になると、編集スタッフも継続され、1冊ごとに丁寧にぬかりなく出版作業が進められました。
 全4冊のラインナップです。

■福田緑写真集(全四巻)
①『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』2008年12月、216頁 
②『続・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』2013年1月、230頁
③『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』2018年8月、244頁
④『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』2020年11月、270頁

 ①はヨハネス・ペッチュのカラー写真と娘・福田奈々子の白黒写真に緑が解説を加えました。リーメンシュナイダーの代表作が収められています。日本初めてのリーメンシュナイダーの写真集ということで、ありがたいことにほぼ完売です。
 ②以降はほぼ緑が撮りおろした写真集です。
 ②は「リーメンシュナイダーを歩く」ということで、ドイツを始めとするヨーロッパ各国、アメリカ・カナダに作品を訪ね歩きました。ドイツの美術館や博物館でもリーメンシュナイダーの図録は出ていますが、掲載作品の所蔵場所が限られています。そうした意味でもこの②はとてもマニアックな本ということができそうです。
 ③は今までに掲載されなかったリーメンシュナイダーと同時代の作家の彫刻が掲載されています。比重はむしろ後者にあります。同時代の作家の彫刻の写真について、日本では『世界美術大全集14 北方ルネサンス』(小学館)を知るだけです。

  ④は3部構成です。
第1部 リーメンシュナイダーを歩く 祈りの彫刻19点
第2部 中世ドイツの彫刻を歩く 祈りの彫刻24点
第3部 資料編

 第1部は、聖母の手、息づく手、祈り、眠り、磔刑、哀しみという視点でリーメンシュナイダー作品をもちろん緑が撮り下ろしています。①と重なる作品もありますが、ヨハネスや奈々子の写真と見比べてみるのも楽しいです。
 第2部は、中世ドイツの個性的な作家による彫刻の写真集です。実はドイツ中の美術館や博物館を探し回ってもこうした写真集は皆無でした。ところがベルリンのボーデ博物館の書籍部で奇跡的に発見したのがマイケル・バクサンドールの本でした。以後、この本が中世ドイツの彫刻に関する我々のバイブルになったのです。実は④の「刊行に寄せて」でバイエルン国立博物館のマティアス・ベニガーさんがバクサンドールについて触れているのです。バクサンドールはイギリスの人で、中世彫刻に対してとても斬新な視点をもたらしたとベニガーさんは評価しています。合わせて、日本から来た福田緑が新しい切り口で写真集をものにしたと書いているのです。
 第3部の資料編が、実はかなり価値の高いものだと思っているのです。60頁になる「中世ドイツの作家たち 作品一覧」「主な参考文献」などの資料編は、書籍、美術館や博物館のカタログ、教会などのパンフレット、ネット情報などを調べ尽くして作り上げたものです。こうした資料はドイツにも今のところ発見できません。研究の基礎資料にでも活用してくれたらと願うばかりです。

 装釘はもちろん、写真の色校正、一字一句の校正に到るまで実に神経を集中して作り上げた丸善プラネットスタッフと緑との合作であることを、身近にいた人間として感じるのです。
 皆様本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

*表紙の写真はニコラウス・ゲルハールト・フォン・ライデンの自刻像ですが、私の顔に似ているというのですが…。
*新刊本に関する緑のブログです。

https://blog.goo.ne.jp/riemenschneider_nachfolgerin/e/0a36aed27c81ceb3420f446cc64885d7


 ◆核兵器禁止条約来年1月発効 核は人類を滅ぼす
  原発も、安全、安価、安定という虚言は破綻した

               鎌田 慧(ルポライター)

 来年1月から、核兵器は国際的に違法となる。
 「生きていてよかった、と大きな喜びを分かち合う日を迎えた」。
 この原爆被爆者の声は、世界史に残るであろう。

 戦争それ自体が残虐な行為であり、日本が仕掛けた戦争だったにして
も、嬰児(えいじ)から寝たきり老人まで数十万の人びとが一瞬にして
殺戮された、地獄的な世界を体験した唯一の国だからこそ、日本政府は
核廃絶にむかう義務があるはずだ。
 にもかかわらず、政府は被爆者の願いばかりか、世界の人びとの
熱意による、核禁止条約締結の運動に目をそむけてきた。
 米国の「核の傘」の下に身を置き「核は戦争の抑止力」の妄言を
支持してきたのだ。

 日米安保条約に支配されているとはいえ、そこには核戦争をするとは
書かれていない。この曖昧な態度が、国際的な孤立を深めないか心配だ。
 菅内閣は「仮想敵」の核基地をミサイルで攻撃する「敵基地攻撃
能力の保持」が背景にある、「積極的平和主義」を国連のビデオ
メッセージで主張している。
 核兵器禁止が広がる、世界の平和運動から取り残されそうだ。
 せめて、これから始まる条約批准国による会議に、オブザーバーで
参加してでも、国際世論を感じ取ってほしい。
 核の「商業利用」という原発も、安全、安価、安定という虚言は
破綻した。
 核は人類を滅ぼす。
(10月27日東京新聞朝刊27面「本音のコラム」より)