後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔63〕3代にわたって楽しんだのは、円・こどもステージ「…帽子屋さんのお茶の会」でした。

2015年12月24日 | 語り・演劇・音楽
  子どもたちが小さい頃、当時住んでいた狭山や清瀬から、休日ごとにはるばる渋谷の東京都児童会館など,都心まで劇を見に出かけたものでした。
  私の子どもたちが最も楽しんでみた児童劇が劇団仲間や風の子、そして円によるものでした。とりわけ円の芝居はお気に入りでした。「自転車ぶたがやってきた」(佐野洋子)や「卵の中の白雪姫」(別役実)などが印象深かったようです。
 上の孫が5歳になりました。ついに円の芝居に連れ出すことにしました。3代にわたって円・こどもステージ鑑賞ということになります。
 ここで円・こどもステージについて説明しておきましょう。

● 円・こどもステージとは――(円・HPより)
 円・こどもステージは、子どもと大人が一緒に楽しめる舞台を創ろうと、故・岸田今日子が企画。1981年から毎年クリスマスの頃に上演を続けています。
 作者に詩人・谷川俊太郎や劇作家・別役実、絵本作家・佐野洋子、きむらゆういち諸氏を迎え、定評がある舞台創りを続けてきました。
 上演した多くの作品が、厚生労働省社会保障審議会薦文化財や東京都優秀児童演劇賞(すでに廃止)に選ばれ、文化庁「舞台芸術体験事業」などの巡回事業にも積極的に参加しています。

 そもそも私がなぜ円・こどもステージに惹かれたかということについて触れてみます。
 日本演劇教育連盟の夏の全国演劇教育研究集会(1987年)で「話すこと・読むこと」の講座がありました。もう30年くらい前なのですね。講師は女優の岸田今日子さんと演出家の小森美巳さんです。講座の内容は、自分が読みたい絵本などを持ってきて講師の前で読み、講師からのコメントをもらうということでした。世話人に私たち夫婦とNさんが名乗り出ました。
 鮮やかに思い出すのは、講座の最後に岸田さんに朗読を2,3編お願いしたことです。工藤直子の散文詩「カタツムリとロバ」などを読んでくれました。私の隣で、あの岸田さんの独特の生声が心地よく響いたものです。絵本にサインをおねだりしたのもその時でした。
 講座はそれ1回きりでしたが、岸田さんからは時々円の公演案内が送られてきました。2人して劇場に足を運ぶことが度々ありました。もちろん円・こどもステージにもです。演出は毎回小森美巳さんでした。
 小森さんは最近の全国演劇教育研究集会の講座「演劇教育の原点を探る」にお忙しいなか2回も来てくださいました。

 さて、孫にとって初めての円の芝居は「〈不思議の国のアリス〉の帽子屋さんのお茶の会」(別役実)でした。別役が初めて円に書いたお芝居でした。1984年初演、2000年に再演、そして今年2015年は再々演ということになります。
 お芝居の簡単のあらすじと、小森さんの案内を見てみましょう。

●ここは、「不思議の国のアリス」のあの森の中。大きな木の下に大きなテーブルが置かれ帽子屋がお茶の会を開こうとしています。お茶の会を手伝うのはチシャ猫と三月兎。
●小森美巳(演出家)〔上演パンフより〕
 童話あそびシリーズと名付けられた一連の別役作品は、この「アリス」の他に「赤ずきん」「白雪姫」「シンデレラ」「ドンキホーテ」「ピノキオ」「青い鳥」等があって、作者はそれぞれのお話の中でそれぞれ違うあそび方をされています。その童話の中の何に、どんな興味を持たれたのか、さぐリ続ける楽しみはつきません。もっとも解明に至ることはほとんどないのですが…。
 こどもステージ第一作目のこの作品は、やればやるほど面白く、これからも観客の年齢を問わず、時代を越えて上演され続けていくことと思います。毎日みんなと稽古場で暮らしていると、私達はまさに別役さんの不思議の国に迷い込んでいるような気がしてくるのです。どうぞご一緒にお楽しみ頂ければ幸です。

 音楽は著名な作曲家・小森昭宏さん、小森美巳さんのお連れ合いです。

 劇場では、孫は妻や私の膝の上で見ていました。時折声をあげて楽しそうに笑っていました。妻や私もそうでした。
 孫の感想は一言、「楽しかったあ。」でした。孫はロビーで出演者の三月兎やアリスなどと写真を撮ってもらってご満悦でした。乗り継ぎの電車でも手がかからなくなりました。「また来たい。」と言っていましたので、今度は下の孫も連れてくることになるかもしれません。

*小森美巳さんの著書、『お母さんといっしょの優しい時間』(グラフ社、2007)がとても読みやすくて、心にすとんと落ちます。



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