平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図

古代史において夥しい新事実を公開する平御幸(Miyuki.Taira)が、独自の視点を日常に向けたものを書いています。

ピエタの難易度

2012-06-22 06:37:26 | Weblog
 ミケランジェロはピエタを幾つも作っていますが、最初のピエタは気に入らなかったのでしょうか?

 これは憶測ですが、このピエタには原型があると思います。それは、レオナルド・ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母(ルーブル美術館蔵)』のマリアです。なぜそう思うのかですが、実際にデッサンをしてみて、いつの間にか岩窟の聖母を描いている自分に出会うからです。特に、向かって左の垂れた髪(ピエタではベールを被っている)は、ピエタでは頬より遠くに位置しますが、描いていると岩窟の聖母のように手前に表現したくなります。また、目も岩窟の聖母のようになってきます。

 岩窟の聖母のマリアは、首を左に傾げています。これもピエタと似ている所です。ですから、ピエタの依頼者は、ミケランジェロに岩窟の聖母に似せるように指示したと考えられるのです。実際に、ルーブル版の岩窟の聖母は何年も前に完成していましたし、ミケランジェロのレオナルド嫌いの説明にもなります。芸術家はプライドが高いですから。

 しかし、ミケランジェロのピエタには、幾つかの独創的なポイントがあります。まず、マリアの年齢です。イエス磔刑時のマリアの年齢はおそらく56才。ミケランジェロのマリアは、ホッペタの張りからどう見ても16才前後です。また、しっかりと閉じた口も処女性の強調に思えます。処女マリアという幻想は別として。

 この口は、少し前に突き出ていて、お世辞にも美人のそれではありません。また、表情自体も仏像のようであって、一見すると穏やかです。しかし、目を見れば分かるように左右で顔の表情の差が大きく、向かって左の「諦めや悲しみ」に対し、向かって右は「静かな怒り」に見えてきます。固く結んだ口は、苦渋と言うか、じっと耐えている表情なのです。

 マリアに抱かれるイエスの肩を見れば分かりますが、イエスの右上腕は付け根で脱臼しています。十字架上で、自らの体重で肩関節が外れるのです。また筋肉に力が入らなくなっているために、マリアの指が食い込んでいます。これほどリアリティにこだわったミケランジェロですから、実際に磔された死体も見ているのでしょう。

 このように複雑な造形と感情の入り混じった作品ですから、決して美人ではないマリアから独特の美しさが醸し出されるのです。従って、描く立場で言えば難易度は特Aです。難しいと言われるブルータスはAですから、初心者は間違っても買ってはいけません。初心者はアバタと呼ばれるビーナスか、ラボルドかミロのビーナスで修練を積んでください。飾っておくだけなら別ですが。

 さて、ここで問題です。このピエタの被るベールには、極めて特徴的な表現があります。ミケランジェロはなぜ、このようなベールの形にしたのか?石膏像を見ただけで分かります。これが分かれば、美術鑑賞眼に長けています。心理学者の素質アリです。答えは宝塚記念の日曜日に書きます。ヒント?それは動きです。

     エフライム工房 平御幸
コメント (27)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする