私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

てくてく奈良街歩き♪ ③ * 正倉院展・漆胡瓶は素晴らしかった *

2016年11月04日 | 旅の楽しみ
~ 第68回 正倉院のポスター ~

さあ、いよいよ最後の目的、正倉院展にやって来ました。
今回の主役は、この漆胡瓶、金属製に見えますが、木をテープ状にして
それをクルクルと巻き上げて成形し、漆を塗り重ねたものだそうです。

この技法は「巻胎」(けんたい)と呼ばれる技法で、この技法のお陰で
1200年もの長い間、木製でありながら割れずに、
表面に張り付けた銀の薄板がはがれずにすんだとのことでした。
そして、この技法は現代でも再現は難しいとのこと、
古代の職人技の素晴らしさにただ驚くばかりでした。

また、表面に施された草花や鳥などの文様は、「銀平脱」(ぎんへいだつ)
と呼ばれる技法で、切り抜いた銀の薄板を貼り、その上から漆を塗って
それを研ぎ出して文様を出しているとのこと。

貼られた銀の文様の繊細さと、銀の経年による重みのある色合いが素晴らしく、
この一品を見ることが出来ただけでも、今回の目的は果たせた気分でした。




~ ポスターの裏面 ~

* 左上 ー 大きな旗 ー 「大幡残欠」(だいばんざんけつ)

聖武天皇の一周忌法会で飾られた織物で全長13~15m、
長さは大仏様ほどもあり、東大寺の境内に翻る様はさぞ見事だったでしょうね。
実物を見ながらそんな想像をすると、天平の華やかさが感じられて良いものでした。


* 右上 ー 小さな鳥の飾り物ー 「撥鏤飛鳥形」 (ばちるのひちょうがた)

ガラスのケースの中で、どこにあるのかと思うほどの小ささです。
染めた象牙の表面に文様を白く彫り出す「撥鏤」の手法で作られ、
目や脚に紐を通したような穴が開いています。
それぞれ羽ばたいている様子や滑空している姿など、1羽ずつの表現が
巧みであり、且つ可愛らしいところなど、鳥に寄せる愛情までも感じられ、
古代の人々の息づかいまでも聞こえるようでした。



*~ 銀平脱龍船墨斗 (ぎんへいだつりゅうせんのぼくと) ~*

今回の展示で、なんと言っても楽しかったのはこの墨壺。
表面の文様は、漆胡瓶と同じ「銀平脱」の技術が使われています。
目をむいて、大きく開けた口からは力太い舌が真っすぐに出ていて
まるで怪獣のような造形にびっくり!



~ 読売新聞の記事より ~

子供たちが興味津々で眺めていますね。
怪獣のような形で舌の上から糸をはかせるなんて、天平の昔にも
こんなユーモアがあったのだと、楽しくなる展示でした。
現代なら「ふざけるな!」とデザインの段階で「ボツ」になっているかも。
天平時代の豊かな精神性が感じられる墨壺ですね。




~ 柳箱 (やなぎばこ) ~
(読売新聞の記事より)

この円形の器は、柳と思われる木の細枝を編み上げたものです。
蓋はにひし形の文様が編み込まれていて、なかなかにお洒落です。
今回同時に展示されている皮のベルト「革帯」(かわおび)が
クルクルと巻かれて納められていたようです。

細かくきちんとした網目で全体の雰囲気はとても上品でした。
「現代の職人さんも驚くほどの出来栄え」との新聞記事に、
まったくその通りに、美しく、素晴らしいと思って見て来ました。




~ 1階のお茶席 ~

美しい庭を眺めながらの一服は気持ち良さそうですね。
今回は時間の都合でパスしました。




~ 法華寺御流の生け花 ~

お茶席の入り口に素敵な生け花がありました。

法華寺様のHPによりますと
華道法華寺御流の起源は、光明皇后が法華寺を建立し広く女人の修業場として
宮中女官を始め当時の人達に身心修養のため、草木幽美の風情を花瓶に
挿すことを奨励したことから始まった。とありました。

秋の風情を格調高い花姿で生けられてとても素敵でした。
こういった会場で、生気のあるものが一つあるだけで、
ふっと心が和んで良いものですね。




~ 車の往来をものともせずに歩いている鹿 ~

さあ、ようやくこれで本日の三つの目的を果たしました。
鹿の横を通りながら、またてくてくとJR奈良駅まで戻ります。




~ JR奈良駅 ~

古都のメインストリートの三条通りを通って、振出しに戻ってきました。
これで本日の歩数は1万4千歩弱、てくてくと良く歩きました。
楽しく、充実の奈良街歩きは終了です。

また来る日までグッバイ奈良の都



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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (fukurou0731)
2016-11-04 12:58:00
越後美人様
こんにちは。
正倉院展に行かれたのですね。
長く行っていません。
若い頃10年ほど続けて正倉院展に行っていました。
昔は空いていたんですよ。今のように混んではいませんでした。混んでいるのが嫌でいかなくなりました。
正倉院の回りは静かで散策に最適です。
返信する
正倉院展 (たか)
2016-11-04 16:05:14
正倉院展はなかなか見応えが有りそう。
漆胡瓶の何処か異国的な姿と言い色合いと言い
ずっと観ていても飽きの来ない作品ですね。
これが木製だと聞き驚きました。
遊び心ある墨壺もユニークで有るのに軽さが感じられない傑作。
ペロッと出した舌を通って墨が流れ出るのでしょうか。

街の中を悠々と歩く鹿君
頭を垂れていないところが大物ですね。

返信する
Unknown (hidepon)
2016-11-04 16:50:26
こんにちは。
この時期の奈良観光の王道、存分に楽しまれたようで、満足感が目に浮かびます。

ボクは高畑の路はしょっちゅう歩いていますが、志賀邸は訪ねたことがありません。
丁寧な文章とキレイな写真を拝見して、十分に訪ねた気になりました。
実は正倉院展もなんです、どこから来るんでしょうネあの人達。
返信する
夕方以降は割引も (越後美人)
2016-11-04 19:57:32
fukurou0731さん、こんばんは。

はい、正倉院展に行って来ました(^^♪
今では全国的に有名になって、大勢の観覧者で溢れていますね。
私も何年か前に行った時には、午前中でしたから混雑していて
思うように見学出来なかったことがありました。
その点、午後からの観覧はさほどの混雑もなく、入場もスムーズで良かったと思います。
fukurou0731さんでしたら、午後からゆっくり出かけて、夕方以降の時間に入られると良いですね。
すいている上に割引もあるようでした(^_-)-☆

正倉院の付近はそういった混雑が無くて、ゆっくりと散策できそうですね。
返信する
実用品なのに超芸術品 (越後美人)
2016-11-04 20:38:53
たかさん、こんばんは。

はい、古物の好きな者にとって、正倉院に納められている物は、「究極の骨董品」です。
どれも1200年も前からあるものなんですね。
そんな遥か遠くからやって来たのかと思うと、感慨深いものがあります。
漆胡瓶はエキゾチックな雰囲気がとても素敵でした。
こんなに芸術的な物を実用に使っていたところは驚きですね。
本当ですね、これが木製だとは驚きの一言です。

墨壺の使い方は、新聞記事の左上に図で示されている通りで、
壺の中で墨汁のついた糸を、口から舌の上を通して引っ張り、
それによって、木の表面に直線を引くのだそうです。
口から糸を吐き出した風で、結構な遊び心ですよね。

この鹿君は、私たちには目もくれずに黙々と歩いていました。
どこか気迫を感じる姿ですね(^_-)-☆
返信する
夕方からの見学をどうぞ (越後美人)
2016-11-04 20:57:51
hideponさん、こんばんは。

はい、今回はお寺巡りはなかったですが、王道の奈良観光を堪能して来ました(^^♪

高畑あたりをしょっちゅう歩かれているとは羨ましい!
志賀邸にはまだ行かれてないようですね。
私の紹介はほんの一部ですから、そう仰らずに、一度ゆっくりと見学して下さいね。

正倉院展は近年すごい人気ですね。
近くに東大寺、春日大社、興福寺など見どころがいっぱいですから、
ついでに行こう、という人が多いのでしょうね。
それと、正倉院展を見に行くツアーもありますからね。
午前中はそう言った団体さんで長蛇の列のようです。
お近くでしたら、夕方から入館されるとゆっくり見学できて良いのでは、、
一度見学されてみてはいかがでしょうか(^_-)-☆
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漆胡瓶、いいですね! (はる)
2016-11-05 01:01:03
正倉院展は何年か前、5絃琵琶が出品された年に行きました。

今年は漆胡瓶が注目の展示物なんですね。
巻胎と銀平脱、元々知らないことの多い私ですが、これも初めて知った
技法です。胴体の左右にゆがみの無いかっちりした成型が見事です!
銀の薄板の模様のほうは、実際に見ないと素晴らしさは体感できないかもしれませんが
鮮明に残る模様が素晴らしいです。

作り方が分かっていて名前が付いているんですから当時は
日本でも作られていたんでしょうか?
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漆胡瓶よ、よくぞ日本へ (越後美人)
2016-11-05 20:05:28
はるさん、こんばんは。

五弦琵琶の出品の年に行かれたんですね。
私もその年に行きましたよ。
とても素敵な琵琶で今も目に焼き付いています。

はい、今年の目玉がこの漆胡瓶です。
こんなに難しい技法を生み出した古代の人はすごいですね。
銀平脱の見事さは実物を見ないと分からない部分が多いのですが、
実物が素晴らしいので写真写りもべっぴんさんです。

銀平脱の技法は中国古来の技法で、この漆胡瓶は中国で作られたとみられています。
当時の航海術で、遥か海を渡って来たのかと思うと、
「漆胡瓶よ、よくぞ来てくれましたね」と胸の高まる思いがします。
本当に、これぞ宝物って感じがしますね(^_-)-☆
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Unknown (hino)
2016-11-06 04:20:07
こんにちは!
漆胡瓶、そんな技法があるとは知りませんでした。1200年の時を超える古代の技術、恐るべしですね。
鹿が普通に歩いてるのが可愛いですね。さすが古都奈良は色々懐が深いです。
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今度は10年後のいつか (越後美人)
2016-11-06 17:32:04
hinoさん、こんばんは!

お返事おそくなりました。
お茶会に出席のため一日出ておりました。

そうですね、この正倉院展に出品されていなかったら、知ることが無かったかも知れませんね。
本当に、古代の技術おそるべしです。
展示された宝物は、傷みを防ぐために今後10年は出品されないのが原則だそうです。
次回は10年後のいつお目にかかれるのか分からないと言うことですね。

鹿が普通に人間の傍を歩いている姿は、中々見れない光景ですね。
古都奈良の懐は深くて温かいです(^_-)-☆
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