私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

傘香合で雨降りを愉しむ

2015年06月19日 | 茶の湯便り

今日は朝からしとしと雨降り
こんな日のお稽古は傘香合を荘り(かざり)
雨の日の風情を愉しみます。



「たのしむ」には二文字があり、「楽しむ」は普通に「楽しむ」「喜ぶ」等々
「愉しむ」は普通に楽しむの他に「不快な心を抜き取って楽しい」との意味があります。

「愉」を分解すると、左側に付いている偏はもともと「心」という字、
右側に付いている「兪」は「抜き取るとの意味があります。

ですから、こんな雨降りで気分がいまいちという時に
この傘の香合を愛でることによって、気持ちを雨降りの不快さから
「雨降りさえも楽しい」に変えてしまおうということなのです。



この香合は飛騨の一位一刀彫
木の国飛騨の「一位の木」はイチイ科の常緑樹で、古くから銘木として知られています。

「イチイ」の語源は、約800年前天皇即位の折、飛騨よりこの木で造った笏(しゃく)を
献上したところ、他の材より優れていたことから位階の「正一位」に因んで賜ったとのこと。

その後、江戸時代末期にこの一位材を用い、木目の美しさを活かし彩色を施さない
一位一刀彫が大成され、現在にその技術が受け継がれているとのこと。
なお、使用する一位材は樹齢四、五百年の貴重なものが吟味され用いられている。
以上、作者説明のしおりより



それにしても、この傘香合、見れば見るほど可愛らしさが増してくる。
それは、傘は傘でもあの骨太の番傘がそのまま小さくなった姿だからなのである。
今時は高級な旅館や料理屋でしか見られなくなってしまったが、
昔は家庭の玄関にも普通に置かれていたものだった。
こうして香合になった番傘から、しみじみと昔の懐かしい雨降りの日が思い出される。
そんなことを考えながらの一服、十分に雨降りを愉しみました。
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