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デミ・ムーア痩せたよ

2009-11-11 19:54:00 | レンタルDVD映画


ずっと雨が降り続けている。紅葉も終わりだろう。
「ダイヤモンド・ラッシュ(Flawless 2007) 」

これは拾いものでした。

デミ・ムーアとマイケル・ケインが世界最大のダンヤモンド商社から2トン(1億ポンド)ものダイヤモンドを盗み出す犯罪実録映画です。折り目正しい英国紳士役が多いマイケル・ケインが掃除夫の役です。たまたま落ちぶれてではなく、もうすぐ定年を迎える老掃除夫。田村正和が同じ役やればコントにしかならないが、名優マイケル・ケインは苦もなくなりきってしまいます。

舞台は1960年代のロンドン。まだキャリアウーマンという言葉すらなく、結婚せずに働く女性がオールドミスと呼ばれていた時代です。ローラ(デミ・ムーア)はオックスフォード卒で最優秀なのに、幹部昇進の道を閉ざされている上に、クビの宣告を待つ身。そんなローラへ老掃除夫ホッブス(マイケル・ケイン)が声をかけてきます。

デミ・ムーアが、年相応の38歳の役どころ。タイトスカートにハイヒールをキュッキュッ鳴らして歩き、膝を組みかえてタバコをくわえます。痩せたので驚きました。エラの張った四角い顔が逆三角形にホッソリ。骨でも削らないと無理なのでは、と思えるほどの小顔になっています。

イギリス映画ですから、それも伝統あるダンヤモンド商社が舞台なので、建物は荘重、家具は重厚、色彩は落としています。お色気やアクションのサービスは皆無。現実味のあるセリフと行動、心理描写を中心に物語は進んでいきます。日米の映画によくあるようなキレた人物は出てこず、常識人しか登場しません。

さて、そうした人間ドラマにくわえて、私はダイヤモンド商社の保険引き受けの仕組みについて、この映画で知ることができました。大金庫を空っぽにされて、2トン(1億ポンド=当時のレートなら数百億円)のダイヤを盗まれたとき、会社はどうするでしょうか。警察には届けません。誰もそんなことは口にしません。

犯人の捜査もダイヤの捜索も保険会社がするのです。そして、世界最大のダイヤモンドの供給元である被害会社にとっては、損害が保険で補填されることよりも、盗まれたダイヤモンドの行方が最大の関心事です。ダイヤモンドが返ってこなければ、会社は致命的に信用を失うだけでなく、ダイヤモンド市場が崩壊します。ダイヤモンド会社と保険会社と犯人の攻防が、この映画の大きな見どころです。

(敬称略)

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