コタツ評論

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ICHI

2009-04-23 15:09:00 | レンタルDVD映画
ICHI  http://www.youtube.com/watch?v=SC3Qu0UvGX0



ご存じ勝新の「座頭市」のリメイクとはいえない。北野たけし監督主演『座頭市』こそリメイクだろうが、この「ICHI」は、あくまで綾瀬はるかの離れ瞽女「市」である。博多人形のようにノーブルな横顔。特徴である黒濡れた瞳が哀しみに虚ろう。しかし、襤褸をまといながらも、その白磁の肌の匂い立つ輝きを隠すことはできない。

ちょうど仕込み杖から白刃が一閃するように、ときおり覗かすうなじやくるぶし、ふくらはぎ。ワーナーブラザースの世界配給も得ているようだが、この羞恥のエロチシズムが毛唐にわかるかしらん。本当に美しい女優が久しぶりに誕生した気がする。「おっぱいバレー」や「ハッピーフライト」など、この後も綾瀬はるか主演作が続く、楽しみ。

監督は、傑作青春卓球映画「ピンポン」の曽利文彦。なるほど、窪塚洋介は「ピンポン」の「ペコ」のように頓狂な声を上げるし、中村獅童は「ドラゴン」のまま凄み怒鳴り、一方、竹内力は「カオルちゃん」のままグヘヘ。大沢たかおも、快活に笑う好青年というおなじみのキャラクター。綾瀬はるかの憂いと儚さを際立たせるためだ。

助演陣は、ほかに、柄本明、利重剛、杉本哲太、横山めぐみ、渡辺えり、といったところ。 役所広司や堤真一など、三谷弘喜映画に出演するような演劇畑の真面目な演技をする俳優ではなく、Vシネマや歌舞伎の傍流、TVから出てきた、どこかうさんくさい、それだけに芸能の猥雑な臭いがする人が多い。

曽利文彦監督もTVのCG制作出身であり、「アカデミー外国語映画賞」ではなく、「ワーナーブラザース配給、ハリウッド進出!」に似つかわしい娯楽映画をめざす、意気軒昂な「映画人」をみる爽やかさがある。

(敬称略)

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