コタツ評論

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春は名のみの風の冷たさ

2014-03-09 11:56:00 | 政治
日本アカデミー賞授賞式をTV中継で視た。

舟を編む」や「さよなら渓谷」の受賞には納得したが、「横道世之介」が外れたのは残念だった。それよりもっと残念だったのは、西田敏行と樹木希林の司会のひどさだった。

そして父になる」で福山雅治と夫婦を演じた尾野真千子に、「以前から福山ファンだったんですって?」といじるなど女性週刊誌インタビューに終始していた。それが台本通りなら、俳優という職業人として抵抗すべきだったし、「おまかせ」なら開いた口がふさがらない。

その映画や場面の意味、演技の工夫や参照などについてはまったく尋ねられず、「いまのお気持ち」とか「現場の雰囲気」ばかりにマイクが向けられる「取材」や「インタビュー」に、きっと俳優たちもうんざりしていると思ってきたが、西田敏行のはしゃぎぶりを眺めていたら、少なからぬ俳優たちもそれに迎合しているのがよくわかった。

司会に、映画への批評性はおろか、作品や俳優への対象化さえ見えず、ヨイショはしても敬意は払わず、ただただ、「お賑やかに」「盛り上がっていきましょう」という宴会乗り。俳優ってのは、どうしようもない人たちだなと舌打ちしそうなのを救ってくれたのは、主演女優賞の真木よう子の真情溢れる短いコメントと主演男優賞の松田龍平の寡黙だった。

「舟を編む」で作品賞や監督賞を受賞した石井裕也監督が、「とにかく、今回は松田さんに勝たせたかった」とコメントしたのに、松田龍平が「えっ」という驚きを見せたのは「へえ」と思った。いつのまにか松田龍平は、オヤジ以上の「大物俳優」になりつつあるようだ。

そういう得がたい場面もあったが、まるで日本にはほかに男優がいないかのように、度々、客席の渡辺謙の顔を映すのでいらいらした。イーストウッドの「許されざる者」をリメイクした渡辺謙が、「彼も褒めてくれた」とクソコメントしたら、「イーストウッドによろしくね、僕も呼んでくださいって、へへへ」と西田敏行が受ける情けなさ。だいだいだな、達者な脇役以上の存在ではない西田がなにを大物ぶって気さくで笑いをとろうとするのか。まったく理解に苦しむ。

受賞作品はともかく、ノミネート段階の優秀賞や優秀作品には日本映画の底の薄さを露呈するものだった。たとえば、「探偵はBARにいる 2 」の優秀助演女優賞で尾野真千子がノミネートされたが、誰が観ても「PART 1」に比べればかなりの劣化作で、一般的にも水準以下の出来だったはず。バイオリニスト尾野真千子もあきらかなミスキャスト。作品丸ごと、まっさきに選考リストから外されるべきだった。

アメリカのアカデミー賞と比べれば、一目瞭然、日本映画のガラパゴスぶりが発揮された日本アカデミー賞に、「普通を描く、それでいいんだ!」と賛辞を贈りたかったのですが、いまだに西田敏行のバカ面と樹木希林の辛気くさい顔がちらついて書けないでいる。

聞き苦しい悪口ばかり云ってしまいました。お口直しに「北方領土問題」について一席。国際常識とは何か、よくわかる話です。

こういう話を読む度に、先の戦争を闘い敗れ、戦後の平和と繁栄をつくってきたのは、明治大正生まれの日本人たちであり、団塊の世代以降の、彼らの子や孫やひ孫たちは、その栄光や苦闘についてほとんど与り知らぬ、「偽日本人」に過ぎないという思いが痛切に込み上げます。

私たちに、日本や日本人を語る資格などなく、ただ、著作権を継承しただけに過ぎないのではないか。苦楽をともにした妻や身近に接した子どもならともかく、面識どころか写真すら見たことがないご先祖の事績に、孫やひ孫が当然のごとく著作権収入を受け取り、これからも続いていくものと当てにしていました。

ほとんどの著作権が期限切れを迎えて、ただいま現在の私及び私たちの不安や不満が噴出している昨今、まるで鏡のように、まさに厚顔の「偽ベートーベン」佐村河内守とぽっちゃり顔の柏強盗殺人事件の犯人が現れました。彼らこそ、鏡に映った私たち、日本人の顔です。

日本人専門家:北方領土問題は政治的神話
http://japanese.ruvr.ru/2014_02_28/129266359/

アメリカン・アイドルそのままの素人発掘番組アラブ・アイドルで優勝したモハメド・アサーフです。再生回数をご覧下さい。ガザの難民キャンプで生まれ育った青年がいまや全米ツアー中です。世界は広く多様だってことです。

Arab Idol


(敬称略)

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