コタツ評論

あなたが観ない映画 あなたが読まない本 あなたが聴かない音楽 あなたの知らないダイアローグ

東京堂書店

2008-08-26 01:47:38 | 新刊本
久しぶりに神田神保町。岩波ホールがある岩波書店神保町ビルから地下鉄を上がって、すずらん通りの「キッチン南海」でカツカレーで腹ごしらえ。東京堂書店へ入る。神田でもっとも好きな本屋だ。人が少ない。静かだ。平台が多い。

というわけで、かねてから読みたかった2冊を買ってしまう。

『偏屈老人の銀幕茫々』(石堂淑朗 筑摩書房)
『ラカンはこう読め!』(スラヴォイ・ジジェク 紀伊国屋書店)

東京堂書店向かいの冨山房ビル裏の喫茶店「ラドリオ」に。古い煉瓦造りの内装に、60年代の人造皮革張りのソファ。懐古趣味ではなく、本当に戦前からありそうな古色蒼然とした店が神保町には何軒か残っている。バナナのスポンジケーキとコーヒーセットを頼んで、『ラカンはこう読め!』をめくる。「日本語版への序文」は黒澤明の「羅生門」を分析している。精神分析にはまったく興味ないが、精神分析手法を応用した映画評論としておもしろそうだと思ったのだ。ほかにキューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」や「エイリアン」「カサブランカ」を取り上げているようだ。

『偏屈老人の銀幕茫々』もパラパラ。以前に読んだ『昭和の劇- 映画脚本家笠原和夫』( 笠原和夫・荒井晴彦・スガ秀実)のような実証や記録の書ではなく、笠原和夫のようなヒット作を連発してはいないが、60年代の「尖った映画」の脚本家として石堂淑朗は気になる人だった。

黒シャツに白い前掛けをきりりとしめたウェイターの格好をした女店員がカウンターの内外に5人もいる。バナナケーキはわるくなかった。Mサイズの濃いコーヒーに、琥珀色のコーヒーシュガー、ステンレス製のミルクピッチャー。音楽はシャンソンだけ。ほかに客は数人。しかし、長居はできなかった。ランプの照明が薄暗くて。もう若くはないのだ。

(敬称略)

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