コタツ評論

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褒めるについて

2022-05-26 00:00:00 | ノンジャンル
夏井いつき先生の「プレパト」という芸能人参加の俳句コンテスト番組をときどき視ている。wikiによれば、なかなか波乱万丈の人生らしい夏井先生の歯に衣着せぬ「査定」が評判である。

梅沢富美男・東国原英夫「名人」への「毒舌」が名物だが、最大の売りはやはりその「絶賛」や「好評価」だろう。「俳句の種をまく」を仕事にするために、夏井先生はかなり話術やコミュニケーションの訓練をかさねてきたようだ。私のような俳句に不案内の者にも、褒める言葉の選び方や表情などを含めて、一種のパフォーマンスとなって説得力を増しているようにみえる。

ヤフコメなどを眺めれば、貶すことは誰でもできることがよくわかるが、褒めるのは、それも説得力を備えて褒めるのはそう簡単ではない。背景となる見識と自信が必要だからだ。貶すのには見識も自信も必要ないし、人格攻撃をするならむしろ邪魔になる。

褒めるにはある程度の訓練が必要という意味において、「プロ」の営為といえ、貶すのは素人の手慰みといえるかもしれない。

もちろん、ある種の宗教勧誘や自己啓発セミナー、マルチ商法などの恫喝や批難、讃辞を繰り出して「洗脳」してしまう「悪達者」もいるわけだが、これは「騙されたい」という欲求に応えているので、別の話だろう。

夏井先生の俳句褒めに刺激されたか、掌編小説や創作的なエッセイを褒めるインターネットチャンネルが出てきたので紹介する。ピース又吉という人の小説を読んだことはないが、こういう良き国語の先生になるべき人が芸人になる時代なんだなと思った。

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若手芸人たちは、自分たちで漫才やコントの台本を書くせいか、たいてい巧みな文章を書きます。ネタやオチを意識しすぎる傾向があるが、ネタもなければオチもない、あるいはネタはあっても使い回し、オチないコロがらない、しかつめらしいだけのTVのニュースショー番組の談話やナレーションとは比較になりません。

若い人たちの国語力低下にも留保をつけたくなる「インスタント・フィクション」が少なくない。マスメディアに登場する専門家やコメンテーターたち、編集者の国語力低下のほうが、はるかに嘆かわしい気がする。

気がするといえば、例えば、ウクライナ戦争のコメンテーターとしてTV番組に出てきた軍事専門家の先生が、「ロシアは戦闘機のおよそ2割を失っているという気がします」と言いやがったのです。また、某TVニュースでは、「ロシアの占領地域をウクライナ軍が奪い返し、開放しました」とテロップを流しました。そのうち、部落開放同盟と書かれるでしょう。天声人語は高校生の作文みたいだし。

(止め)
コメント
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