コタツ評論

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日当20,000円の学術会議問題について

2020-12-13 00:12:00 | ノンジャンル
2020/11/6 「出版を!https://moon.ap.teacup.com/chijin/1697.html にて、イタリア学会の声明文を紹介した。さらにその解説が出たので読んでみた。かなり落胆した。声明文そのものも買いかぶりすぎだったのではないかと自らを疑った。

イタリア学会の声明文についてもっと知りたい人のために
http://studiit.jp/pdf/%E5%A3%B0%E6%98%8E%E6%96%87%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8%E8%A9%B3%E3%81%97%E3%81%8F%E7%9F%A5%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%E6%96%B9%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB.pdf

たいへん懇切丁寧に書いてある。ほとんど中学生か高校生向けといえるくらいに、とてもわかりやすい。言い換えれば、中学生か高校生レベルを想定して書いているのではないか。

とするなら、「なんと教養豊かな」と感嘆した私も中学生か高校生レベルに過ぎなかったということになる。声明文もよく読み返してみれば、教養以前の一般常識といえる内容ではないか。

にもかかわらず、私以外にも、このイタリア学会声明文を絶賛する声が相次いでネットで話題となっていたわけだ。

ちょうど、数十年ぶりに月刊文藝春秋を読み、読後感がよく似ているのに気がついた。どのような分野の記事やエッセイにしろ、一般的な知識や情報を駆使し、多少の教養的な背景を加味する、いつに変わらぬ総合雑誌の誌面づくりにある満足感を覚えた。

つまり、月刊文藝春秋に知的満足感を覚えるほど、今日の日本の活字文化は停滞し劣化しているならば、私及び私たち自身の言葉もまた瘦せ衰えているに違いないという道理に出会ったわけだ。

こんな理会に落胆したわけだ。馬の鞍(くら)にまたがって遠くを見渡したつもりになっていたが、まだ鐙(あぶみ)に足がかかるかどうかくらいなのに、乗馬についてわかったようなことを言うようなものだった。

言うまでもなく、声明文やその解説に落ち度はない。あくまでも乗り手側の問題であり、これが乗馬経験の豊富な練達の人なら、より遠くに視野を馳せながら、周辺の風景を興趣をもって眺めて進むことができるだろう。

それはさておき、日本学術会議をめぐるリテラシーの問題として、この「解説」はよくまとまっている。これでわからなければ、わからないほうがどうかしている。

そのどうかしている、わが選良たる代議士の面々の名前を知りたくて、自民党のホームページを検索してみたが、残念ながら自民党プロジェクトチームのメンバー名は見つからなかった。

日本学術会議の改革に向けた提言https://moon.ap.teacup.com/chijin/1697.html
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200957_1.pdf

巻末の<参考資料1:諸外国のアカデミーについて>に驚いた。日本学術会議の年間予算は、この間の周知のとおり、約10億円だが、全米科学アカデミーは208億円、ロシア科学アカデミーは1,216億円、中国科学院は7,178億円なのだ。

自民党プロジェクトチームの学術会議改革の提言について、朝日社説は怒っている。

社説)学術会議改革 任命拒否の撤回が先だ
https://www.asahi.com/articles/DA3S14727184.html

社説は社論とされるが、一般記事での扱いはきわめて微温的なものに終始している。誰も読まない社説はアリバイづくりであることがわかる。

付言:いま発売中の月刊文藝春秋の「それでもトランプは歴史的大統領だった 」(E・トッド)が読みたかった。「トランプの再選の方が、どちらかと言えば望ましい」と公言してきた筆者がトランプの「功績」を端的にまとめていて、その路線が不可逆であることを指摘している。

もらい泣き / 一青窈


日本学術会議のトピックになぜ「もらい泣き」なのか。とくに関係ありません。ただ、綿矢 りさの『蹴りたい背中』という小説のタイトルを知ったときと並んであっけにとられた歌だったので。

(止め)
コメント
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