ホームから母を連れだしてコメダ珈琲へ。
かあさんにはウィンナコーヒーを頼む。
盛大にのってきた生クリームに、
鼻の頭と唇を白くしながら、真剣に飲んでいる。
たて続けにタバコも吸う。
小学生の頃もこうして、
仕事から帰ってきたかあさんが、
コーヒーとタバコで一息入れるのを眺めていた。
ほんとうに一息一息せわしく口に運び、
「ありがとね」とすぐに台所に立つのがつねだった。
いまもそうしたいらしいが、
大振りなマグカップが重いのと、肺活量が衰えたために、
ずいぶんとゆっくりになった。
「この前はあまりおいしくなかったけれど、このコーヒーはおいしいよ」
「そうかい、よかったね」
たぶん、かあさんがウィンナコーヒーを飲んだのははじめてのはずだ。
あの頃は、インスタントコーヒーだったし、
その後もスーパーの安い粉挽きコーヒーしか知らないはずだから。
「おまえとこの店に来たのは、はじめてだね」
「そうだね」
「あたしはコーヒーが好きだ」
とはいっていたが、
とろりと濃いストレートコーヒーなど味わったことはないはずだ。
かあさんのコーヒーはいつも、
クリープやスジャータをたっぷり入れて、
コーヒー牛乳のようになっていた。
「ここのお金は大丈夫なのかい?」
「だいじょうぶだよ」
「あたしは一銭もお金がないんだ」
「うん」
あと何回、かあさんに、
コメダ珈琲のウィンナコーヒーを飲ませてやれるか。
かあさんにはウィンナコーヒーを頼む。
盛大にのってきた生クリームに、
鼻の頭と唇を白くしながら、真剣に飲んでいる。
たて続けにタバコも吸う。
小学生の頃もこうして、
仕事から帰ってきたかあさんが、
コーヒーとタバコで一息入れるのを眺めていた。
ほんとうに一息一息せわしく口に運び、
「ありがとね」とすぐに台所に立つのがつねだった。
いまもそうしたいらしいが、
大振りなマグカップが重いのと、肺活量が衰えたために、
ずいぶんとゆっくりになった。
「この前はあまりおいしくなかったけれど、このコーヒーはおいしいよ」
「そうかい、よかったね」
たぶん、かあさんがウィンナコーヒーを飲んだのははじめてのはずだ。
あの頃は、インスタントコーヒーだったし、
その後もスーパーの安い粉挽きコーヒーしか知らないはずだから。
「おまえとこの店に来たのは、はじめてだね」
「そうだね」
「あたしはコーヒーが好きだ」
とはいっていたが、
とろりと濃いストレートコーヒーなど味わったことはないはずだ。
かあさんのコーヒーはいつも、
クリープやスジャータをたっぷり入れて、
コーヒー牛乳のようになっていた。
「ここのお金は大丈夫なのかい?」
「だいじょうぶだよ」
「あたしは一銭もお金がないんだ」
「うん」
あと何回、かあさんに、
コメダ珈琲のウィンナコーヒーを飲ませてやれるか。