特異的IgE抗体が検出できなかった23歳女性の漢方治療
患者:A某 23歳女性 初診年月日:2013年7月14日 主訴:前腕、手甲、顔面、前胸部の痒みを伴う発赤疹 病歴:以前から痒みを伴う湿疹様病変が散発していたが、半年前から、人間関係でストレスが高じ、皮膚病変が悪化、便秘出現、市販の便秘薬を服用していた。生理前になると病変が悪化するとのこと。初診時はちょうど生理が始まった日であった。精神的に不安定だと訴える。
初診時所見:
(写真下 順に右側顔面、前胸部、右前腕)
局所の発赤と熱感、掻痒を伴う紅斑状の顔面病変と前胸部の散在性病変(上)
肘内側には病変が少なく、上腕部、前腕部に痒みを伴う発赤疹が存在。陳旧性ではなく、比較的新しい感じがする。 さて、初診時の漢方処方を考える上では、以下のような問題点がありました。先ず、精神的に不安定であることに対しての漢方治療をどうすべきかであり、片や、湿疹というより熱感を伴う紅斑(熱毒)に近い顔面の病変がありますので、涼薬の安神剤(安定剤)が宜しいと判断して柴胡加竜骨牡蠣湯を選択しました。清熱解毒/養陰潤膚/祛風止痒法はアトピー類似病変ですが、「異病同治」を応用しました。外用ステロイド剤は通常量の1/7程度に希釈して処方しました。紫草エキスや当帰エキスも外用剤に配伍しました。 ダニ、ハウスダスト、他に食物系、環境系のアレルゲン検査(結果の説明は初診時には不可能で、2週間後になりました。)はすべて陰性でした。 ワサビを除く香辛料(カレー類、キムチ類を含む)、ニラ、ニンニク類、オニオンスライス、チョコレートなどを禁食にして、中身が不明瞭なプロティンのサプルメントも中止としました。便秘薬は苦寒の大黄製剤に変える様にとお話ししました。 二診時(7月31日)所見(写真下)
顔面、前胸部の皮膚病変は改善傾向が明らかです。
外用ステロイド剤はさらに減量して4診(10月24日)の顔面(写真下)
顔面の紅斑は全消しています。
直近(2014年2月2日)の写真です。(下)
顔面正常、前胸部正常となりました。上腕部、前腕部も寛解状態です。 経過は順調、熱毒外溢型アトピー類似皮膚疾患は病状寛解です。 生理周期と重なる頭痛、気分の落ち込み、逆にイライラ、蕁麻疹、皮膚の痒みなどは女性特有の症状ですね。(本症例には、中医学での経行蕁麻疹の治療を一部参考にしました。) 漢方(中医学)の基本は弁証論治、(同病異治も含めて)異病同治、随症加減ということになりますね。 患者さんも病情が軽快してくると、喜んで写真を撮るのに同意されます。(患者さんと同様に)医者も以前の症状を鮮明に記憶してはいられないものです。写真は皮膚科診療の最重要なエビデンスとなります。 ドクター康仁 2014年8月8日(金)
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