陳以平氏 医案 湿熱案 (腎病的弁証与弁病治療より)
患者:唐某某 58歳 男性
初診年月日:1999年3月8日
病歴:
1997年7月末、はっきりとした誘引無く、双下肢に浮腫が出現、某病院受診、24時間尿蛋白定量1.6g、中薬(内容不記載)治療を受けたが効果は不十分、10月に再検:24時間尿蛋白定量4.0gと増加、プレドニゾン、シクロフォスファミド治療を受けるが、効果不良で治療停止、その後、腎生検を受け膜性腎症(2期)と診断を受ける。女史を頼って来院する。
陳女史初診時所見:
下肢浮腫著明、感冒発熱にかかりやすい、苔薄黄膩、脈滑数、24時間尿蛋白定量7.1g、血清アルブミン/グロブリン:16.8/18.7(単位不明であるがA/G比1以下で低アルブミン血症を示唆する)、トリグリセリド4.2mmol/L(357mg/dL)、総コレステロール13.9mmol/L(540mg/dL)。
初診時弁証論治:
証は湿熱、清熱利湿(を主として)、益気活血を補佐とする。
処方:
黄耆30g 当帰12g 蒼朮/白朮各15g 猪苓/茯苓各15g 山薬20g 巴戟天15g 淫羊藿15g 金桜子30g 益母草30g 鶏冠花(収渋薬に分類される意味では芡実や金桜子と類似作用がある)15g 白花蛇舌草30g 以上煎じ薬。活血通脈カプセル(内容は不記載)を併用し、黒大豆丸を口服。
コメント:上海学派は黒大豆をよく使用します。そのまま煮るか煎じるかして汁ごと食べるか飲めばいいと思いますが、わざわざ丸剤にしたのです。黒大豆は脾腎の二経に入り、「本草綱目」には“腎病を治し、利水下気に働き、諸風熱を制し、活血解毒に作用する”と記載があります。現代上海学派では、蛋白尿の軽減、低蛋白血症の補正に一定の効果があるとされます。
巴戟天15g 淫羊藿15gはどちらも利湿、特に淫羊藿は燥湿の性質を持ちますが、両者ともに温で補腎陽の働きがありますので、湿熱弁証の湿「熱」の「熱」を清熱するのには適さない気がします。最初から使用するのはいかがなものか?直接女史に配伍の理由を聞けばいいのでしょうが、評析に期待しましょう。
1999年5月17日再診:
上方服用後、浮腫は消退、先週、再度発熱あり下痢する、24時間尿蛋白定量6.87g、血清アルブミン/グロブリン:21.5/20、トリグリセリド20.8mmol/L(1768mg/dL)、総コレステロール8.3mmol/L(321mg/dL)。
コメント:トリグリセリド20.8mmol/Lと急激に上昇したことに対する解釈が述べられていませんので、20.8mmol/Lは2.08mmol/L(176.8mg/dL)の誤植でしょう。
苔薄黄膩、脈滑数。 証は湿熱膠着であり、清利を加重する必要がある。
処方:
上方より巴戟天 淫羊藿 鶏冠花 金桜子を去り、半枝蓮30g 蓮子肉30g 灯心草(木通には腎毒性があるために、灯心草で代用する。清熱利湿 清熱除煩に作用する):30g 藿香12g 白蔲仁3g 狗脊15g
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