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生理痛の漢方治療 続編

2007-01-13 14:43:26 | うんちく・小ネタ

湿熱

「湿熱(しつねつ)」は中医学独自の概念です。中医学の歴史的にも比較的新しい分野に属します。湿には外湿と内湿があります。外湿は環境、気候的なものです。内湿とは脾の水湿運化作用が傷害されると正常な津液の輸布が行われずに津液の病理産物として湿が体内に溜まります。これを内湿と言います。内湿と熱邪が結びついたものが湿熱です。

湿熱のイメージは「じくじくしていて湿っぽい」「赤みや熱がある」といった抽象的なものです。また、中医学には湿熱下注(かちゅう)といい、湿熱の邪が下へ注ぐという概念があります。これも西洋医学とは異なる独自なものです。例として、外陰部の灼熱感や臭いのある黄色い帯下(おりもの)、陰嚢(いんのう)の痒み、じめじめした発赤などは湿熱下注が原因とされます。もちろん、不潔な性交などによる感染などは外因的な湿熱の成因となります。

湿熱が原因となる生理痛

 局所の灼熱感や掻痒感があり、生理の色が暗紅色で粘調である。口が粘る感じがあるなどの特徴があります。舌診では舌質は紅く、苔が厚く黄色身を帯びていて(黄?苔)、黄色の粘調の帯下(おりもの)が見られる場合があります。脈は滑あるいは弦で頻脈傾向があります。

 中国医学では陰部は肝経が走行する部位ですから、肝経の異常をきたす、精神的なストレスなどは陰部掻痒などの原因になります。湿が溜まりやすい体質は、甘いものの過食、脂っこいものの過食などによる脾虚に加え、水分の取りすぎも原因となります。

 有名方剤加減

 竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃがんとう)

  山梔子 木通 車前子 澤瀉 生地黄 当帰 柴胡 生甘草が組成です。青は苦寒涼薬、赤は温薬、緑は平薬です。

草(りゅうたんそう)は肝胆湿熱の要薬とされます。血圧を下げる作用もあります。黄 山梔子は竜胆草と同じ清熱解毒燥湿剤に属します。燥湿(そうしつ)とは湿を乾燥させるという意味です。

木通 車前子は利水通淋剤に属し、利水滲湿剤に属する澤瀉と共に利水(利尿)効果により湿を除きます。

柴胡は諸薬を肝胆経に導く引経薬としての働きの他に、肝気を疎通して化火を防止します。

肝経の熱は肝陰を消耗しやすく、また苦寒燥湿薬も肝陰を損なう(傷陰)しやすいので、滋陰薬でありかつ涼血作用のある生地黄、養血作用の当帰を配合してあります。生甘草は清熱と調和諸薬に働きます。

全体として中医方剤学では「瀉中有補、利中有滋」の配合になっていると説きます。上部の熱を清瀉すると同時に、下焦の湿熱を清泄する働きとなっています。

効能 ①瀉肝胆実火 ②瀉下焦湿熱

主治:肝胆実火上擾(頭痛目赤、耳聾、口苦、胸脇痛)と肝経湿熱下注(陰部湿疹、小便淋濁、湿熱帯下、筋痿陰汗)

加減:

便秘の場合は大黄を加えます。

下焦の湿熱の程度が軽ければ適時 木通 車前子 澤瀉を減量します。

陰虚を合併すれば退虚熱に牡丹皮、補腎陰に女貞子 旱蓮草を加えます。

肝気郁結が強ければ適宜 芍薬 夏枯草 川楝子を加え柔肝 理気解郁します。

日本のエキス剤には柴胡が除かれた処方になっています。

清熱調血湯明代 古今医鑑)加減

黄連 敗醤草 牡丹皮 生地黄 苡仁 茯苓  紅花 牛膝 桃仁

香附子 延胡索 当帰 白芍の組成です。

黄連は清熱解毒燥湿に、敗醤草は清熱解毒 活血清肝に、牡丹皮は清熱涼血 活血淤に、生地黄は清熱涼血 滋陰清熱に働き、以って清熱燥湿活血に働きます。

苡仁 茯苓は健脾利湿作用により湿邪を除きます。

 紅花 牛膝 桃仁は活血化淤作用により、湿熱に阻まれた胞脈の循環を改善します。

香附子 延胡索は行気止痛作用に働きます。延胡索は活血剤でもあります。

当帰 白芍は生地黄と共に、陰血を補い、熱邪による陰血の消耗を防ぎます。

 以上のように湿熱の邪を除くためには、清熱解毒燥湿薬と利水薬、活血薬、陰血を守るための滋陰養血薬の組合わせによって治療するのが原則です。

その他、湿熱の邪を除く古くからの方剤として、

二妙散?朮 黄柏)牛膝を加えた 三妙散?朮 黄柏 牛膝)さらに苡仁を加えた 四妙散?? 黄柏 牛膝 苡仁)があります。

 湿熱は湿と熱のどちらが盛んであるかによって、利水湿薬 健脾燥湿薬の配合と清熱剤の配合の割合を変化させます。

三仁湯(さんにんとう) 清代 温病条件

古くからある湿重熱軽の場合の方剤として、三仁湯があります。組成は杏仁 ? 苡仁 竹葉 通草 滑石 半夏 厚朴です。杏仁 白? 苡仁の三仁に由来する名称です。三仁により、それぞれ上焦、中焦、下焦より湿邪を除き、竹葉 通草 滑石により清熱し、(竹葉には清熱利尿作用があります。通草には利水通淋作用、滑石には湿熱瀉泄作用があります。)半夏 厚朴はそれぞれ化痰燥湿、行気燥湿により湿邪を除きます。清熱作用は涼薬である苡仁 竹葉 通草であり、解熱作用は弱いものの利水湿作用を兼ね備えているのが特徴です。滑石(カッセキ)は女性陰部の要薬とも言われ湿熱タイプの婦人病に有効です。また、滑石に加え、瞿麦(くばく)や蓄草(べんちくそう)などの利水通淋剤も近代中国では多用されています。

以上、男性にはうかがい知れない女性の生理痛について、

①「冷え」が原因となる場合

②「冷えと湿」が原因となる場合

③「ストレスによる肝気郁結」が原因となる場合

④「肝気郁結が肝郁化火に変化」して「熱」が原因となる場合

 ①~④は前稿で

⑤「熱」と「湿」の「湿熱」が原因となる場合

 について本稿でお話しました。

   続く、、


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