陳湘君女史は上海龍華病院の膠原病専門中医です。小生のすずき康仁クリニックの趙中医師の先生格となります。
患者:袁某、25歳 女性
初診年月日:1991年5月8日
病歴:
微熱、頭痛、乏力、脱毛、顔面紅斑、両手のレイノー現象、蛋白尿3ヶ月。他の病院での心電図検査で心筋障害。眼底検査で網膜病変を認める。抗核抗体1:640(均質型)、抗二重鎖DNA抗体77μg、C3 0.60g/L、IgG18.3、IgM3.61、直ちにプレドニゾン40~60mgを服用、病情終始寛解を見ず、氏を受診した。
初診時所見:
尿蛋白(2+)、関節酸痛は顕著ではない、乏力を自覚する、気短、頭痛、満月様顔貌、眼瞼浮腫、両頬に紅斑がまだ観察できる、食欲不良、大便1日1回、苔薄、脈細。
中医弁証と治法:
証は脾腎欠虚(両虚)、精微不能固摂に属する。益気健脾、補腎固摂を治則とする。
薬用:
生黄耆30g 白朮10g 薏苡仁20g 芡実15g 煅牡蠣 煅竜骨各30g 金桜子20g 丹参 益母草 白芍 桑螵蛸各30g 鶏内金 山楂 谷芽 麦芽各15g
経過:
上方加味治療10ヶ月後、プレドニゾンは漸減して5mgを維持量とした。血圧は穏定30/12kPa(225/90mmHg)前後、下肢の浮腫は消失、精神的に活発になり、気短は感じなくなり、ただ体動時に汗出を感じ、眩暈や物がはっきり見えないことがあり、舌質偏紅苔薄、脈細。気陰両虚の象にて、益気養陰の方に改める。
薬用:
生黄耆30g 白朮10g 炒防風9g 生地20g 白芍 淮小麦(安徽省産の浮小麦)各30g 枸杞子12g 何首烏30g 知母 黄柏各12g 炙甘草10g 木賊草15g 虎杖30g 牛膝15g。
経過:
患者は1994年2月に妊娠し、すぐに流産したが、病情は始終穏定。プレドニゾンは停止、現在に至るまで再発無し、既に1日仕事に就労し1年余。
評析
本案の病機は脾腎両虚、水湿不能運化伝輸、精微不能固摂化生である。治療は補益脾腎を法とし、故に、黄耆 白朮 薏苡仁、鶏内金、山楂、谷芽を益気健脾に、芡実 竜骨 牡蠣 金桜子 桑螵蛸を収斂固摂に、丹参 益母草を活血利水の目的に使用し、続いて益気の黄耆 白朮 枸杞子 何首烏などで善後調理した。―中略―ステロイドを漸減停止し病情は平穏、症状も軽快した。
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