本日の講座で「急性腎炎」を終わりにします。十二診もある長い医案なので覚悟を決めて打ち始めます。( )内に随時、コメントや印象を入れます。
それでは医案に進みましょう。
患者:孫某 13歳 男児(小児症例です)
初診年月日:2005年1月19日
病歴:
一ヶ月前、咽痛、眼瞼浮腫、血圧上昇、発熱、現地の病院で検査;尿蛋白3+、血清アルブミン3.35g/dL。診断はネフローゼ症候群、ステロイドは未使用。3日後、ハルピン医科大学付属第二病院受診、診断は急性腎炎、10日間入院、やや好転し退院、氏の病院を受診。
(臨床的には急性腎炎症候群で、蛋白尿の強いタイプだったのでしょう。入院中の具体的な治療内容の記載は有りませんが、抗生物質、利尿剤とというところでしょう。浮腫や咽痛、高血圧が軽減して、一段落として退院、以後は中薬治療という流れです。)
初診時所見:
尿検査:潜血3+、尿RBC満視野/HP(1月13日 尿蛋白+、潜血3+)。乏力、手足心熱、腰酸、尿黄、舌質紅、舌苔白、脈数。
(蛋白尿は軽減し、血尿が残存している状態です。中医学的には、気陰両虚かつ熱証です。)
中医弁証:外感熱邪が入裏し、下焦血絡を損傷し、脈外に血が溢れた状態
西医診断:急性糸球体腎炎
治法:清熱解毒 滋陰涼血止血
方薬:知柏地黄湯加減:
生地黄15g 熟地黄15g 山茱萸15g 女貞子20g 旱蓮草20g 亀板20g 山薬20g 牡丹皮15g 焦梔子15g 小薊30g 白茅根30g 側柏葉20g 蒲黄15g 茜草20g 三七10g 知母15g 麦門冬15g 玄参(清熱解毒養陰)20g 重楼(清熱解熱毒利湿利咽)30g 金銀花30g 連翹20g 甘草15g
水煎服用、1日1剤 2回に分服
(22生薬と多いですね。知柏地黄丸は六味地黄丸:熟地黄あるいは生地黄 山薬 山茱萸 澤瀉 牡丹皮 茯苓に知母と黄柏を加味した補腎陰清熱退虚熱の方剤ですが、上方には澤瀉 茯苓 黄柏が配伍されていませんので、一目で知柏地黄丸加減方が見て取れるようになれば方剤学の知識が優れていると言えるでしょう。)
(養陰群は女貞子 旱蓮草、旱蓮草には止血作用もあり、亀板、麦門冬、玄参です。)
(止血薬群は旱蓮草、焦梔子、小薊、白茅根、側柏葉、蒲黄、茜草、三七です。)
(清熱解毒群は玄参、重楼、金銀花、連翹です。)
二診:2005年2月2日
尿検査:蛋白(-)、RBC30~40個/HP、潜血3+、腰酸好転、手足心熱消失、全身乏力、双下肢浮腫無し、舌淡紅、脈沈細。
(顕微鏡学的血尿は満視野/HPから30~40個/HPへ改善してきました。内熱証も軽くなって充分な養陰と清熱が功を奏してきたのでしょう。舌質も紅から淡に改善してきましたね。全身乏力と気虚証が目立ちますね。益気し、引き続き養陰、止血、清熱解毒、活血等が必要なところです。)
方薬:
黄耆30g 太子参25g 山薬20g 薏苡仁(利水滲湿)20g 土茯苓(菝葜 山帰来と同じ、甘淡/平 清熱解毒除湿泄濁利関節)30g 白茅根30g
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