黄文政氏医案 脾腎気虚案(天津中医薬2003年 第5期より)
患者:拱某 71歳 男性
初診:2001年9月
病歴:
患者ネフローゼ症候群歴3年、治療により水腫は消退、但し蛋白尿が長期に減軽せず、中西多方面の治療が無効であった。
初診時所見:
気短乏力、大便希溏、納呆食少、脘腹張満、腰膝酸軟、下肢に軽度の浮腫、舌質淡苔薄白、脈細弱。
尿検査:蛋白(4+)
弁証論治:
脾虚の弁証を主とする
処方:
黄耆15g 党参15g 熟地黄25g 山茱萸15g 山薬15g 牡丹皮10g 茯苓30g 澤瀉30g 白僵蚕10g 全蝎10g 益母草30g 芡実15g 金桜子15g 蜈蚣2匹
コメント:参耆六味地黄湯に、活血利水消腫の益母草と消減尿蛋白の白僵蚕、さらに、固渋の水陸二仙丹(芡実 金桜子)、虫類の活血熄風の全蝎 蜈蚣の組み合わせとなっている解りやすい処方ですね。全蝎10gですよ。多いですね。
経過:
7剤服用後、下肢の水腫は減軽、大便が硬くなって下痢は止まり、原方から芡実、金桜子を去り、鶏血藤15g(苦温:活血化瘀 舒筋活絡)、丹参30gを加味して継続服用7剤、下肢の水腫は消失、効いているので方剤を変更せず、上方継続30日、検尿で尿蛋白(プラスマイナス)、症状は顕著に減軽、患者の意向を尊重し丸薬を生成し継続服用、今日に至るまで再発無し。
評析
本案の患者の症状は脾腎気虚の症状であり、故に方中に黄耆 党参を重用し、補益中気を行い;山薬 茯苓にて健脾滲湿、澤瀉にて利水滲湿;熟地黄 山茱萸にて補腎填精;芡実 金桜子にて収渋固精;牡丹皮 益母草にて活血化瘀;白僵蚕 全蝎 蜈蚣にて腎絡の風邪を捜削する。水邪は風邪が無ければ平静にして澄み、風邪に遭遇すれば波が立ち濁るのである。全方は健脾補腎に優れ、また祛風利水活血の効もあり、方剤を組みたてるに誠に当を得ている。
ドクター康仁の印象
一度みたら暗記できるくらいの単純な組み合わせの方剤ですが、芡実 金桜子を去り、更に活血化瘀の温薬の鶏血藤 涼寒薬の丹参を加味するのを見ると、黄氏の活血化瘀重視の態度を感じます。「水邪は風邪が無ければ平静にして澄み、風邪に遭遇すれば波が立ち濁るのである。」自然現象を例えにして、熄風の重要性を「素人」を頷かせるには便利な言い回しです。
「風」も「瘀血」も、証としては現れていませんので、黄氏の弁病論になるのです。
糸球体はうっふ~んのピーマン也や?
先日、馬刺しを食いに立ち寄った居酒屋で
「先~生!見たわよ。美味しそうなピーマンの写真 あれってアートなの?」
「まさかあ、ピーマンってことはないだろう。一体何の写真なんだよ?」
「人生なんとかの、暗闇のピーマンの輪切りの写真」
彼女はスマートフォンで手早く小生の目の前に話題の画像を差し出した。
「ん人生? おっ! 膜性腎症の免疫蛍光法の写真だったのか!」
「グリーンに輝いて美味しそうだわァ」 右脳優位
「そうか、ピーマンの芯がメサンギウムだったのか」と暫し感慨の小生
「メス?どうしたの?これって、どういう訳なの?」 左脳発現の兆し
「それがさぁ 訳(わけ)ありなの。」 説明拒否
「ふ~ん」
「うっふ~んだろ? 訳ありなんだから」 話題転換
「うっふ~ん? 嫌だぁ 先生」 右脳極大
人は、幸福であることを知らないと、不幸になるもの也や。
逆は必ずしも真ならず。
2013年7月02日(火) 記