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パニック症候群の漢方治療 続編

2008-03-17 19:22:02 | パニック症候群

漢方医の思考回路の紹介

胃腸(脾)から考えると漢方治療はわかりやすい

脾(ひ)は五行学説では「土」であり五志は「思」である。脾は口に開き、その華は唇、五行では土、志は思、液は涎、筋肉と四肢を主る。という中医学の基礎理論があるが、説明は省く。

さらに 中医学の臓腑学説では、

脾は運化(平たく考えて消化と水分の吸収)を司り、清を上昇させる運化升清の機能を持つ。

脾の水穀運化作用により水穀精微から後天の精の本が吸収され、水穀精微の栄養部分は営気となり脈内に分布し肺、心を経て血となり、水穀精微の「力」の部分は衛気となり肺の主気作用により全身の脈外に分布する。また脾は水湿を肺と腎に運ぶ水湿運化作用を持ち、肺、腎は気化作用により水湿を汗液と尿液に変えて体外に排出する、津液の生成、代謝に深く関与する。これらは脾の昇清を主る機能による。

脾は統血作用を持つと説く。(脾の統血作用とは気の固?作用の具体的表現である。)

やや面倒になってきた感がするが、胃腸機能は「気」「血」の源になる栄養を吸収し、体内の水分の分布やその性質に深く関与し、出血を防止するような生体の機能と深くかかわっている。ということになる。

 体液(津液しんえき)の分布、代謝に関して中医学では次のように説く。

津液は脾の運化作用により水穀から小腸、大腸より吸収され、脾の昇清作用により肺に運ばれ肝の疏泄作用とともに肺の主気作用、宣発粛降作用(通調水道作用)により三焦をめぐり、肺の宣発作用の一部として汗になるとともに、腎の気化作用による利尿によってその量が調節される。

 これまた面倒な理論ではあるが、中医学でいう健脾湿(けんぴきょしつ)や健脾化痰(けんぴかたん)という治療方法は、脾の水質運化作用を正常に戻し、体内の異常な「痰」「飲」を取り除くという意味である。

ちなみに、「痰」とは水質の異常に変化したものであり、身近な、いわゆる目に見える気道から喀出される「痰」と、目に見えない「痰」があると中医学では考えてきた。「肺は貯痰の器、脾は生痰の源」という中医学の格言にも近い概念がある。

目に見えない「痰」の特徴は、

    病を長くさせる。久病挟痰、怪病挟痰という概念がある。

    気血のめぐりを阻害し、気滞、血を生じさせる

    多種多発の性質を持つ

    神明を擾乱(じょうらん)する(精神を混乱させる)

    舌苔が粘? (ねんじ)(診察した場合である)

    体が肥りやすい(必ずしも当てはまらない場合もある)

「飲」については説明を省く。

パニック症候群の漢方治療に当たっては、治療の主眼点をどこに置くかで、若干の違いはあるものの、思考回路には、必ず「脾」が入っている。

ここからスタートするわけである。

                      続く。


パニック症候群の漢方治療

2008-03-16 19:13:27 | パニック症候群

過呼吸症候群と引きこもりの漢方治療経験から

十分に時間をかけてゆっくりと患者さんの話しを聞くのが治療の第一歩

暇な漢方医は、多くて1日数人の診察予約である。

時間はたっぷりある。まずは患者さんの訴えを十分に聞くことが、どんな症例でも治療の第一歩である。

忙しい保険診療では絶対に不可能なことだ。昔の病院時代の外来は、あまりの忙しさに思考停止状態であったことが思い出される。健康保険の通る範囲であるか?後で患者からクレームをつけられない程度に説明をしているか?支払い基金からカットされない薬の内容か?保険指導のさいにケチをつけられないようにカルテを記載しているか?等々、患者の顔など見ている暇はない。機械的に口をパクパクさせて話はしているものの、思考は停止していた。

患者さんの話は遮らない。全部話を聞きだす、話させることが肝心

 そもそも、何から話していいのかわからないほど本人が混乱している場合が多いのがパニック症候群である。

「理由もなく突然激しい不安や恐怖感に襲われるんです。」

「心療内科を受診したんですね。不安神経症と言われたんでしょう。あっ そうじゃないんですか、内科ですね。じゃ自律神経失調症かぁ。」知ったかぶりの若いお医者さんに多い先を急ぐパターンである。  

話を急いではいけない。とつとつと患者さんに話させることが大切なのだ。症状は多彩であるから、

「動悸がするんです。 息が詰まる様な胸の閉塞感があります。息がすえなくなるような息苦しさを感じます。呼吸が荒くなりハッハッと呼吸が頻回になり、呼吸をすればするほど苦しくなり、手足がしびれるなどの症状で救急車騒ぎを起こしたことがあります。過換気症候群と言われました。あせればあせるほどパニック状態になりました。」

順番はまちまちだが、大体このようなことを訴える。これも順番はまちまちだが、いろんな検査と、患者自身を混乱させる診断について患者は話をし始める。大方、次のようなものだ。

もちろんある程度の質問はいれる。赤小文字部分が先を急がない漢方医の言葉である。

各論正解 総論的治療不十分であるのが西洋医学?

「動悸と胸痛で心電図検査や運動負荷試験を受けました。どうでしたか?でも、心臓自体に異常が無く、発作性頻拍症と言われ、で?何かお薬はいただきました?

心臓の興奮を抑える薬を処方されました。他のお医者さんは受診されましたか?

別の医者では心臓神経症と言われ、精神安定剤を処方されました。」

「眩暈(めまい)、手の振るえ、急に滝が流れるような異常な発汗があります。

それでまた受診されて、何か検査を受けましたか?

甲状腺機能を調べてもらいましたが異常がありませんでした。」

「手足の冷え、頭痛があるので脳外科でも診てもらいました。するとCT検査を受けられたんですね。

頭部のCT検査を受けましたが以上ありませんでした。頭痛薬を処方されました。」

「不眠傾向がひどいので内科で眠剤をいただいてます。飲まないと?

寝つかれませんし、やっと寝ても途中で目がさめてしまうんです。」

「他人と一緒に食事に行くと、急に食欲がなくなり、喉が詰まって吐き気がして、トイレに駆け込んでオエーっと吐いてしまいます。仕事の最中はどうですか?

仕事の最中にも同じような吐き気が出現します。食欲がなくなり、全然食べられなくなってしまいます。お腹が痛くなるとか?下痢っぽくなることは?

腹痛、下痢を繰り返すので、消火器内科で胃カメラ、腸の検査を受けて過敏性大腸症候群といわれ、お薬をいただきました。」

「耳鳴りがすることがあり、耳鼻科で検査を受けました。で? 

めまいがすることがあるから、メニエール氏病かも知れないといわれました。」

「頻尿があるので、泌尿器科で頻尿改善剤をいただいてます。」

心療内科も受診されたでしょう?

心療内科では軽度うつ病と言われ、抗うつ剤を処方されました。」

生理の異常はありますか?生理不順とか生理痛とか?

ええ、この間は子宮がん検診を受けてきました。婦人科の先生は更年期障害と言われ、それでホルモンパッチ療法を始めています。」

自律神経失調症と言われたことは?

ご近所の先生は、自律神経失調症だから、自律神経の薬を飲むようにとおっしゃって○○という薬を服用しています。」

人込みを避けるようになりますねえ。

最近では交通機関、集会が苦手になり、次第にそれらを避けるようになって、買い物にも行けず、家で引きこもっています。」

数々の薬剤を服用していても、症状は改善せず、とうとう引きこもりのようになってしまった28歳の女性が母親と一緒に相談にいらっしゃった。

 それにしても一般内科 消化器内科 婦人科 脳外科 泌尿器科 耳鼻科の多数の診療科を受診したものである。各論的にはそれぞれお医者さんは義務を果たしたのであろうが、、患者さんは鯨(くじら)じゃない。?

昔、日本では「鯨一匹で七浦が潤う」といわれたが、お一人で、沢山の診療科に収入を与えたわけである。少しぐらい症状が改善しなければ、それこそ、「医療費の無駄使い」である。

                      続く