かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠 141(スペイン)

2014年03月03日 | 短歌一首鑑賞
   【西班牙 3 オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P60
                 参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
                 レポーター:渡部慧子
                   まとめ:鹿取未放


97 突兀たる巍々(ぎぎ)たるそしてふくらなる山越えて群翔しくる鸛(こふのとり)

      (レポート)(2008年9月)
 「突兀」は(岩、山などがつきでているさま)、「巍々」は(高大なさま)、「そしてふくらなる山」と写生されている大地。その大地にあるスペインは、ヨーロッパ・アフリカを往来する渡り鳥の通り道になっている為、鳥類がきわめて豊かである。それを示すようにイベリア図式美術というものがあって、新石器時代、青銅時代の岩面画に図式化・抽象化された動物がある。鹿、鶴、亀、鸛などが単純な線に表されているという。
 常々鳥をこまやかに象徴的にさまざまに詠ってきた作者だが、はるかな昔からこの大地をゆききしているであろう鸛の種としての生命力をたたえるように「群翔しくる」と詠いながら、山河もろとも大きくとらえて、爽快な一首だ。(慧子)

     (まとめ)(2008年9月)
 現代ではあまり使われない「突兀たる」、「巍々たる」という漢文調の描写が、文字づらも厳めしく、険しい山の姿を読者にイメージさせてくれる。その上「ふくらなる」ときて、険しいだけではないやさしいなだらかな山容もあるところが楽しい。険しく厳しいばかりの山容では渡ってくる鸛の表情もけわしいものになるが、彼らは「ふくらなる」山の上をも飛んでくるのだ。そのあたりが馬場の鸛への優しさなのだろう。日本では日常見慣れない鸛が群れをなして飛翔してくるイメージは何か珍しくたのしいものだ。(鹿取)

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