かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠40(アフリカ)

2017年06月19日 | 短歌一首鑑賞

 馬場あき子の外国詠 5(2008年2月実施)
  【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P165~
  参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、高村典子、藤本満須子、
       T・H、渡部慧子、鹿取未放
  レポーター:N・I       司会とまとめ:鹿取 未放
       
40 鏨打つ老爺の遊びに生れたる金いろばつた一つくだされ

     (まとめ)
 一種類しかない鏨を器用に扱って老爺が作る金いろのばった。金ではなく金いろだから、真鍮かなんかに金の色が塗ってあるのだろう。老爺のあまりに鮮やかな手業のゆえに、作者は感嘆し「遊び」と言ったのであろう。もちろん老爺は生活のためにばったを作っているのである。結句の「一つくだされ」という、民話のような言い回しに味わいがある。老爺のつつましい生活を重く受け止め、そこに老爺の誇りを見いだしているからこそ、労りのこころを込めて「一つくだされ」と言っているのだ。あくまで老爺との関係は対等である。
 老爺の作る「金いろのばった」は表題にもなっている重要な素材である。作る人びとにとっては日常的に見慣れたものであるが、作者は「金いろのばった」をアフリカの象徴としてこの一連の中にもちこんだのであろう。ただ、近年、このばったが大群となって穀物を食い荒らしながらアフリカの大地を移動し、農業に甚大な被害をもたらし、世界的な問題になっているのも事実である。(鹿取)


     (レポート)
 昔、アフリカには黄金伝説があって、金銀細工を作る職人がたくさんいた。また巡礼の人たちには接待もし、誰にでも智恵を授けていた。老爺の遊びとは優れた作品のことで、作者はそれを金色と捉え、歌人のユーモアで一つくだされと表現して生きた歌だと思います。(N・I)

 
    写真は、その時のアフリカ土産。金いろばったではなく、青と白のサソリ。   

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿