かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠 144(スペイン)

2014年03月06日 | 短歌一首鑑賞
   【西班牙 3 オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P61
                  参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
                  レポーター:渡部慧子
                   まとめ:鹿取未放


100 震動幾山河震動させにつつオリーブの実を落す西班牙

      (レポート)(2008年9月)
 (国敗れて山河あり)とは中国の詩人杜甫の山河だ。戦いの後雄大な山河は昔ながら残っていたという内容。さて掲出歌「震動幾山河震動」の「西班牙」の山河。思えばアルタミラ洞窟壁画に始まり聖書にタルシンと記述されているタルテソス王国の存在、諸民族の侵入と攻防、又一時ローマ帝国の版図になり、皇帝を輩出、それに伴うキリスト教、イスラム教の変遷、またコロンブスの新大陸の発見、それに始まる(日の没することのない帝国)と言われた繁栄と凋落、独裁政権から民主国家への移行など。ここでは簡単にしかたどれないが、その変遷のいかなる時も「オリーブ」はみのり「オリーブの実を落す西班牙」であった。このスペインの時空の象徴として「オリーブ」は動かない。
 オリーブの収穫時の轟きを「震動」と詠い「震動幾山河震動させにつつ」と初句から3句までの破調と重複にスペインの激動とそれへの作者の深い感慨がこめられていよう。特に「震動」4音を初句に据える大胆さが一首によく働きながら「つつ」で下の句へ繋がり「オリーブの実を落す西班牙」と作者の感動は一首を分けられない。その上の句の破調から下の句へのおだやかな調べへのうつりもなべてを肯定している作者の心のようである。西班牙の魅力的な歴史と山河、そこへ象徴として響きのあまやかなオリーブを配し、すべてを一挙につかんでスケールの大きい一首に仕上げた手法に感服する。(慧子)

      (発言)(2008年9月)
★機械でオリーブを落としている音(藤本)
★米や小麦ではなく副食でもっている国。スペインという国を詠っている。(崎尾)
                             
      (まとめ)(2008年9月)
 韻律が非常にいかつく、漢字も厳ついが、ダイナミックな印象を与える為の計算上のことである。スペイン中が轟きながら揺れているような時空の広がりを感じさせ爽快である。私の見たテレビ番組では手作業でオリーブの実を落としていたが、大規模の農園では機械を使うのだろう。(鹿取)

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