かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠116(スペイン)

2018年10月29日 | 短歌一首鑑賞
 馬場あき子の外国詠13(2008年11月実施)
  【西班牙4 葡萄牙まで】『青い夜のことば』(1999年刊)P65~
   参加者:T・K、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・S   司会とまとめ:鹿取未放


116 ソムリエはネロのセネカを知らざりき昼餐の質朴なかぢきまぐろよ

        (まとめ)
 115番の「コルドバの赤きワインに透かし見るネロを去りたる愁ひのセネカ」の続きで、コルドバで赤ワインを傾けながら昼食をとっている。餐とあるからやや豪華な料理であろうか。そこでソムリエにワインはどれが合うか相談しながら、ふとセネカのことを話題にしたのかもしれない。コルドバはセネカの生まれた土地だから当然知っていると思ったのに、ソムリエの反応は「セネカって誰?」というようなものだったのだろう。そこで旅人は驚いて「暴君で有名なネロの補佐をした哲学者ですよ。この町の生まれだそうですよ。さっきそこの公園でセネカの銅像を見てきましたよ。」などと説明するはめになった。「ネロのセネカ」(ネロに仕えたセネカ、を縮めたのだろう)というややこなれない言いまわしはこういう状況を想像するとよく分かる。もっとも、そうか土地の人でもセネカを知らないのかと黙ってひとり感慨にふけったのかもしれない。土地の普通の生活者というものは、たとえ町にセネカの像が建っていようが哲学者などというものにはえてして関心がないものだ。そしてワインを傾ける昼餐ながら素朴なかじきまぐろの料理が出てきたというのだ。
 こういう齟齬は、日本の地方の町などでいくらでもありそうな気がする。日本料理屋に入った外国人の客の方がその土地の歴史上の人物をよく知っているというようなことが。(鹿取)



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