河瀬ビジネスサロン ライフワークを育てよう!

コーディネイター河瀬謙一@SOHO CITY みたかからの発信。
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実行へのヒント-791

2023年05月07日 | Weblog



伊藤レポートと思考の整理学から

伊藤レポートとは、経済産業省がまとめた企業のサステナビリティに関する報告書である。
同レポート(1.0)は2014年8月に公表され、持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~についてまとめられたもの。
伊藤邦夫氏を座長にして作成された報告書なので伊藤レポート(1.0)と呼ばれる。

続編に
・伊藤レポート 2.0(2017)
・伊藤レポート 3.0(2022)
がある。
参考URLはここ。

伊藤レポート(3.0)では日本企業のサステナビリティ獲得は待ったなしの状態だ、とされる。
急ぐのである。

一方、思考の整理学とは1983年に刊行され、1986年文庫化された外山滋比古氏(英文学者)によって書かれたベストセラー本だ。
ビジネスマン向けの教養書として企画されたが、2008年に東京大学と京都大学の生協の書店販売ランキングで1位となり、2009年、100万部を突破。2016年、200万部を突破。2021年時点で253万部を売りベストセラーの仲間入りを果たしている。

この本の冒頭で外山滋比古氏は人間には二種類あり、ひとつはグライダー型人間で素直なタイプ。
ただ残念ながら、誰かが引っ張らないと浮上し飛行ができない。
もう一方は飛行機型人間で自分で勝手に飛び回る。
ちょっと前まではそんな人が組織で活動したら迷惑な存在であり、マイナーだった。
しかし時代は今、飛行機型人間を求めているのだから、グライダーにエンジンを積めばいい。
それには、思考を整理し、思考を寝かせることも必要(急がない)といい、それら方法を述べたものが本書だ、となる。

ただグライダー型の人間が多いのは、教育システムと内容がそうなっているのだから仕方がない。
こちらを変えればいい、とまでは言っていない。
多分手間と時間がかかりすぎて現実的ではないからだろう。
ならば、それはそれとして、本人が自覚して変わればいいのである。
そのためには学びが必要だが、学校で学ぶだけが能じゃないとも述べられている。

例えばこんな話が思い出される。
ヨーロッパの貴族の子供は上質の家庭教師数人から学ぶことが普通だった。
これは物事の本質を学び取るのに最高の方法らしい。
だから200年前にフランスの貴族のひとり、トクヴィルがアメリカを旅行して、民主主義の本質をズバリ見抜いた、などという話は納得ができる。
学校教育が盛んになるのはその後の時代である。

その他昔から働く人にも「独学」という手があった。
つまり現実の中で働く人は忙しいので、目の前の社会から学び、お客様から学び、仕事から学ぶ。
さらに先輩や知り合いから知恵を仕入れて、自分の経験と失敗を混ぜて力をつけて行く。
これは実力獲得の早道であるとされた。

さて話を戻すと、伊藤レポートは経産省の報告書だから文章が硬く、専門用語とカタカナが多い。
それは政府や役人、また広く実業界の人に読まれるので、そういう表現にならざるを得ないという明確な理由がある。

一方、思考の生理学は当初からビジネスマン向けに書かれたのだから、大学教授である外山滋比古氏の「読みやすい方がいいだろう」という配慮から、実に柔らかな表現が用いられている。

どちらが良いというのではなく、どちらとも読む人を想定して書かれてある。
プロのサービス精神が発揮され、実に立派である。

もうひとつ、それら学者の文脈ではなく、別の角度からの「ヒント」だってある。
そう、独立独歩で自分の道を拓いた人の言葉だ。
それは実に分かり易く、読む人、聞いた人が実行しやすいように配慮されている。

最後にこの例を二つだけあげておこう。

・人が生きていくうえで、生き甲斐を持つためには、まず手の届く目標を立てることが必要でしょう。
私は「どんな小さなことでもいいから、自分なりの目標を持ちなさい」と言います。
それをクリアできた時の気分を味わって欲しいし、次の目標へのステップともなり、ひいては生き甲斐につながると思うからです。

・私はこれからの道は、経費がかからないで、自分のちょっとした注意、ちょっとした発明、ちょっとした工夫で商いの出来るものを、皆が選んでゆくように希望する。

前者はアート引越しセンター創業者の寺田 千代乃さん、
後者は阪急・宝塚の創業者、小林一三さんの言葉である。



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