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絶対正義は必要ない(日本文化のユニークさ総まとめ02)

2012年05月21日 | 相対主義の国・日本
「日本文化のユニークさ」5項目(現在は6項目)のそれぞれについて、かつて通して考察したことがある。しかしそれ以外のところでも関連したことをいろいろ書いてきた。それらすべてを該当する項目の下に集めて、もう一度整理しながら考え直したいと思っている。

6項目のどこから始めてもよいのだが、たまたま前回まで5番目に関連したことを書いていたので、ここから始めることにする。(→ユニークさ全項目を振返る(日本文化のユニークさ総まとめ01)参照)

前回の記事に関してはpuさんから日本の祟り神と相対主義との関係についてヒントをいただき、名無しさんからは、江戸文学に相対主義的な価値観が表れているかどうかという問いをいただいた。

私は、「日本文化のユニークさ」6項目のもとに、過去に蓄積されてきた多くの日本人論・日本文化論を整理・統合してみたいという意図をもっている。そういう方法意識のもとに、いただいたコメントへの応答もかねて考えていきたい。

まず、6項目のうち5番目を次のように追加修正したい。

5)宗教などのイデオロギーによる社会と文化の一元的な支配がほとんどなかった。また、文化を統合する絶対的な原理や正義への執着がうすかった。

こう修正したうえで、そのようなユニークさをもつようになった背景を次のような5つにまとめたい。今回はこれらを列挙するにとどめ、詳しい考察は次回以降としたい。読んでお分かりのように、5つのうち3つは、「日本文化のユニークさ」6項目のどれかに重なっている。これら6項目は、相互に深い関係があるので当然といえば当然なのだが。

①前農耕文化だが高度に発達した縄文文化の時代が1万5千年も続き、その自然崇拝的・母性原理的な心性が日本文化の底流をなしている。そして、その宗教的心性が、絶対的正義を標榜する普遍宗教を受け入れるときのフィルターとして働いた。

②縄文時代から現代に至るまで、豊かな恩恵をもたらしながら、ときに狂暴化する自然のもとで生きてきた。そうした自然への畏敬が、荒魂(あらたま)・和魂(にぎたま)という、神の極端な二面性への信仰となり、また日本人独特の無常観をも醸成した。

③高度に発達した縄文文化は、大陸から渡来した弥生文化によって消え去ったのではなく、縄文文化は基盤として根強く生き残りながら、大陸文化と融合していった。その事実の宗教的・政治的な帰結が神仏習合である。

④弥生時代以降も一貫して、日本列島に異民族が大挙して侵入したり、さらに日本民族を征服したりすることがなかった。したがって「正義」の優劣を決する熾烈な争いも、完璧に異民族の「正義」の支配下に置かれてしまう経験ももたなかった。そのため縄文時代以来の独自の文化を保持しながら、大陸の高度文明の不都合なところはわきにおいたまま「いいとこどり」を繰り返すことができた。

⑤日本列島は、国土の大半が山林地帯であるため、水田稲作は狭小な平野や山間の盆地などでほぼ村人たちの独力で、つまり国家の力に頼らずに、灌漑設備や溜池などを整備してきた。巨大な専制権力や、それを可能にする政治的、文化的な統治イデオロギーも必要なかった。強大な権力による一元支配がなかったのである。

これらがすべて、日本文化の相対主義的な価値観を形成する重要な要因になっているだろう。次回以降は、この5点のそれぞれをやや詳しく見ていきたい。

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ジャパナメリカ02
クールジャパンの根っこは縄文?

《関連図書》
☆『日本とは何か (講談社文庫)
☆『日本人はなぜ震災にへこたれないのか (PHP新書)
☆『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
☆『日本の曖昧力 (PHP新書)